外郎(ういろう)家と深い縁 市川團十郎さん、逝く 加藤市長ら悼む声
小田原ゆかりの歌舞伎「外郎売」を十八番とする12代目市川團十郎さんが3日、肺炎のため死去した。享年66歳。生前、團十郎さんと親交のあった加藤憲一市長と株式会社ういろう(市内本町)の取締役、外郎武さんが思い出を語った。
「目力が印象的」加藤市長
加藤市長が團十郎さんに初めて会ったのは2009年の9月。代々市川家では「外郎売」を上演する際、小田原の外郎家を訪問し、上演のあいさつをする習わしがあり、團十郎さんはその際に加藤市長を表敬に訪れた。「大変著名な方なのに誠実で腰が低く、驚きました。白血病を克服された直後で治療の形跡が見受けられましたが、目の迫力が印象的でした」と加藤市長は当時を振り返る。国立劇場での公演の際に楽屋を訪ねると、気さくに歓迎してくれたという。「艶やかで色気がある舞台でした。訃報を聞き、非常に残念です。外郎売は小田原の象徴。海老蔵さんには市川家の十八番をぜひ継承され、今後も小田原との交流をお願いしたい」と話した。
「和の心を持つ人」外郎武さん
市川家と外郎家の交流は300年前にさかのぼる。2代目團十郎さんが喉を痛めた際に薬のういろうを服用して復活を遂げたことがきっかけだった。「妙薬を世に知らしめたい」と外郎売を演目に取り入れたという。
外郎武さんは「まさに、日本の尊。あたたかく、和の大切さを体からにじませてくれる人」と團十郎さんを表した。昨年8月に小田原市民会館で行われた「外郎売の口上大会」では、「小田原の人に喜んでもらえるなら」と、無償でトークショーに出演。観覧後は記念撮影にも快く応じてくれた。「訃報は悲しい。團十郎さんに励まされ、外郎家の伝統を守り続けてこられた。團十郎さんのように愛される外郎家にしていきたい」と語った。