青葉区 人物風土記
公開日：2025.07.10
6月1日付で青葉消防団長に就任した
吉村 郁生さん
荏子田在住 69歳
誠実に、堅実に
○…前団長の退任に伴い、思いがけずお鉢が回ってきた。「そんなに大層なことじゃありません。今まで通り続けるだけです」と控えめにほほ笑む。この街に生きる者として、地域の安心・安全を守るのは当たり前。謙虚な心で約４７０人の団員を束ねる。
○…生粋の青葉っ子。枝物の生花を中心に、４００年近く続く農家の生まれだ。地元を離れたのは「新婚旅行の２週間が最長じゃないかな」。大学卒業後、税務大学校で商法の講師を務めていたが、結婚を機に30半ばで実家を継いだ。同時に、周囲の誘いで消防団の一員に。「数年だけのつもりが、気付けば30年以上になりますね」
○…この30年、実際に火災現場を４、５回経験した。昔は、人探しの依頼も多かったという。今の課題はもっぱら大地震時等の災害救助。チェーンソーや油圧ジャッキといった新たな資機材に、建物倒壊などを想定した訓練。消防団が担う役割の変化に伴い、学ぶことも増えていく。「街を守り、人を守る。やりがいのある活動ですよ」
○…青葉に根を下ろした人生、地域で任される役職も増えた。多忙の合間、ひとときの癒しはレコード鑑賞だ。こだわりのオーディオ。ソファのセッティングも完璧。おいしいウイスキーを片手に自分だけの世界へ。「子どもの頃のあこがれ。ようやく最近、良いものを集めて楽しむ時間ができて」。繊細な手つきでレコードをかけるその瞳は、少年のようだ。
○…社会が変わっても、消防団のやるべきことは変わらない。常に学び、備え、若い団員を育て、地域の安全を守り続ける。「特別なことは何もないですよ」。強い動機はなくとも「やるからにはしっかりと」。その姿勢ににじむ、誠実さと責任感が頼もしい。
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