新吉田町にある天台宗の寺院、星宿山正福寺(新吉田町4569)には、大勢のサッカー少年と、少年らに囲まれた笑顔の住職が収まった写真がある――。300年以上の歴史がある寺院の境内に併設されているのは、サッカークラブ・エストレーラFCの事務所。同クラブを運営するNPO法人の理事長は、正福寺の住職でもある奥村良玄さん(51)だ。住職であり、クラブの運営者・コーチでもあるという奥村さんに「二足の草鞋」に至った経緯や思いを聞いた。
夢だったクラブ運営
新吉田東のサラリーマン家庭で育ち、学生時代にサッカーに夢中になっていた奥村さん。大学卒業後に一旦は就職したが、バブル崩壊後の不安定な世の中から将来を考え直し、「教員免許を生かし人と関わる仕事を」と知人とともにブラジルサッカー留学の斡旋業を始めた。サッカーコーチも務める中、次第に年代別指導の必要性を感じるようになったという奥村さん。「自身のサッカークラブを」との思いが膨らみ、2001年3月、年中〜小1約30人の選手でエストレーラFCを発足させた。
エストレーラはポルトガル語で「星」の意。そこには「一人一人がいろんな色で輝けるように」との願いを込めた。
しかし、何もかもが順風満帆とはいかず、生活は安定しない。クラブを守るため、他クラブでのコーチ業やドラッグストアでのアルバイトを掛け持ちする日々が続き、いつしか幼い長男とともに夫人の実家である正福寺で暮らすようになった。
やがて転機が訪れる。夫人は3姉妹の長女。正福寺では本堂の建て替え事業が進んでいた最中、前住職の義父が病気で倒れ、奥村さんに跡継ぎとして白羽の矢が。正福寺での生活の中で掛け軸等を目にし「どれも大切な言葉」と感じていたこともあり、「お世話になっているし、きっと自身の成長につながるはず」と心を決めた。
正福寺の山号は星宿山。「星」の字はクラブ名にも通じるが、奥村さん曰く、これは偶然だという。
「般若心経の暗記テストでのヒヤヒヤ感」から始まった天台宗総本山、比叡山延暦寺での修行を終え、正福寺の副住職に。住職となった2010年ころにはエストレーラFCの戦績に比例してクラブ運営も軌道にのり、年々クラスは増えていく。現在は幼稚園児・小学生140人、中学生60人の選手とコーチ10人が在籍する。
感謝の気持ち大切に
立地を生かし、選手を招き寺合宿や坐禅体験等を催すが、指導にはあまり宗教色を出さないようにしているとか。ただし食事の際は正座、音を立てずに器は両手で――。食事の作法と感謝の気持ちを持つことの大切さはしっかり伝える。
感謝を表す一つが、年4回のペースで行っている地域清掃。昨年11月に始めたもので、練習で使用しているグラウンド周辺が主な活動場だ。今年11月には中学生50人で、軽トラの荷台いっぱいのゴミを集めた。それでも「いつもより綺麗」と選手たちは街の変化を感じ取っており、近隣からはお礼の言葉も届く。
サッカー指導で子どもたちに伝えているのは、互いを認めて自分の良い部分を出すこと。「これは生きる上でも大切なこと。最澄さまの言葉『一隅を照らす』にも通じる。選手にそう(その言葉)は言わないけれど」
ホームグラウンドを持ち、多世代がサッカーを楽しめる環境をつくりたい――。今後を見据える奥村さん。住職としても、地域を対象に写経や坐禅会、精進料理の体験会を開くアイデア等を口にする。
自身を育ててくれた地域でコミュニティづくりを進め人の輪を広げる。これこそ、豊かな地域づくりとなり、恩返しにつながると信じている。
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