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公開日:2026.09.03

菊名福美湯 64年の歴史に幕 設備不良や営業体制限界

  • 薪を切る店主の加藤さん

    薪を切る店主の加藤さん

  • 建設当時の福美湯(提供写真)

    建設当時の福美湯(提供写真)

  • 利用者の心を癒してきたロビー

    利用者の心を癒してきたロビー

  • 閉店を知らせる張り紙

    閉店を知らせる張り紙

  • 現在の福美湯(8月29日撮影)

    現在の福美湯(8月29日撮影)

 菊名駅近くの銭湯「福美湯」。1962年の開業以来、地域に親しまれてきた銭湯だが、設備の老朽化により9月27日(日)を最後に閉業する。福美湯の店主、加藤喜彦(74)さんに取材した。

 福美湯の始まりは1962年、今年で64年目を迎える。加藤喜彦さんの父が54年に開業した「菊の湯」に続く2店目の銭湯として開業した。当時は自宅に風呂がある家が少なく、銭湯の需要が多かったという。加藤さんが店を営むようになったのは80年のこと。

 朝8時から仕事を始め、就寝は深夜2時から3時頃。「プライベートを分けず、仕事と私事を両立させる働き方で続けてきた」と話す。家族だけで頑張りたいという強い思いから人を雇わず営業を続けてきたが、設備の老朽化や2人体制での限界を感じ、閉業を決断した。

薪へのこだわり

 同店最大の特徴は、「薪」を使って湯を沸かす昔ながらのスタイル。解体業者などから仕入れた木材を加藤さん自身が切っている。夏場にはトラック1台分、冬場はその3倍程の薪が必要となるという。「薪で沸かすとお湯に独特な匂いがこもる。ガスだけだと効率はいいけれど手間をかけたい、薪を燃やしたかった」と振り返る。

 特徴はその他にも。ロビーには海水性熱帯魚の泳ぐテーブルや、妻・久美子さんのフラワーアレンジメント作品が飾られ、店内を華やかに彩る。また石鹸やシャンプーを置いておける月額300円の貸しロッカーや、加藤さんが考案した浴室内の休憩スペースなど、心地よく便利に過ごしてもらうための心配りが散りばめられており、利用者の心を癒やしてきた。

 福美湯は評判を呼び、店には地元の常連客だけでなく、近年のサウナブーム時には遠方からの来店客や著名人が訪れることもあったという。

名残惜しむ地元客

 閉業の知らせに対し、地元からは惜しむ声が相次いで寄せられている。久美子さんによると、90代女性の常連客が店頭で「あとひと月だけだなんて寂しい。これからの楽しみがなくなってしまう」と涙を流し、別れを惜しんだという。また、同湯の魅力に惹かれて菊名の街へ移住を決めた夫婦や、SNSを通じて魅力を発信し続けたいと語るファン、さらには「設備の修理費を支援したい」と存続を願う声まで上がり、地域での存在感の大きさを物語っている。

 加藤さんはこれからの銭湯について、「昨今、原宿の東急プラザ・ハラカドの地下に小杉湯原宿ができるなど、銭湯文化を再興する動きも見られる。自分達のような働き方ではなく、時代に合わせて形を変えながら銭湯文化が残って行くのでは」と温かい眼差しを向ける。

閉業後のこれから

 閉業後のこれからについて尋ねると、「他の風呂屋に薪を持って行ってあげたい。みんな高齢で薪を切るのも大変で困っていると思う。手間賃はもらうけどね」と笑顔を見せる。また、現在は年に4〜7回ほど開催している久美子さんのフラワーアレンジメント教室も閉業後は回数が増えるかもしれないという。

 地域に寄り添い、湯を沸かし続けてきた64年間。福美湯は最後まで温かいぬくもりを届けながら、9月27日に暖簾を下す。

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