中区・西区・南区 教育
公開日:2026.01.01
横浜平沼高校125周年記念
歴史紡ぐ「奇跡の校歌」
歌い継がれる平沼のシンボル
昨年125周年を迎えた神奈川県立横浜平沼高校=西区。同校の校歌には、日本の音楽史が凝縮されていることをご存知だろうか。作曲者は、瀧廉太郎の師であり、日本女性作曲家の先駆けである幸田延(のぶ)。多くの学校が戦後の価値観の変化とともに歌詞や旋律を改めた中で、平沼の校歌は奇跡的にその姿を留めた。100年以上歌い継がれている校歌の歴史を、長年同校の音楽教師として務めた故・佐藤一夫教諭の記述(百周年記念誌)と共に紐解いていく。
日本音楽の「母」作曲唯一の校歌
同校は1900(明治33)年10月に、「神奈川県高等女学校」として認可。開校以来約15年の間校歌がなかったが、1916(大正5)年11月3日立太子礼奉賀式の際、記念行事の1つとして校歌制定が決まった。
この校歌の作曲を手掛けたのが、文豪・幸田露伴の妹で「日本初のクラシック音楽家」として知られる幸田延だった。延は日本音楽界初の官費留学生としてウィーン音楽院で学び、帰国後に東京音楽学校(東京藝術大学)で教鞭をとり、瀧廉太郎や山田耕筰ら日本を代表する音楽家たちを育てあげた人物だ。延の作品は器楽による大曲に限られる中、この校歌は唯一の歌曲であり「まさに”音楽史上の文化財”と言えるもの」と佐藤教諭は綴っている。
作詞者の佐佐木信綱も、幸田露伴や横山大観らと共に第1回文化勲章受賞した明治を代表する歌人。当時最高権威だった作曲者・作詞者によって校歌が出来たことが、最初の奇跡といえる。
『荒城の月』の一節
延が手掛けたこの校歌の特徴は、出だしの2小節が、瀧廉太郎の代表曲『荒城の月』と相似していること。瀧は延から作曲を学んでおり、同校の創立年に『荒城の月』を作ったが、2年後に早逝してしまう。そのため延がオマージュの意味で校歌にこのフレーズを入れた可能性があると言われている。また、短い32小節の間で6回も転調があり、佐藤教諭は「この校歌の短い中に殆どデカダンスとも言える多数の技法を駆使して、しかも気品を失わず、形式(フォルム)を崩さず、見事に小宇宙を構築していることに驚かされます」と賛辞を送っている。
戦後に歌詞を改訂
戦後日本は米占領軍下に置かれ、教育現場は大きな変革を迫られた。軍国主義的な色を帯びていると見なされた多くの校歌が歌詞の変更や廃止を余儀なくされた時期である。同校でも当然『天皇の威光恩寵によって栄える世に 教育勅語を手本として毎日励む』等という意味の校歌が厳しい検閲に通るはずはなく、歌詞の改訂が必要となった。
1950(昭和25)年の創立50周年を機に、佐藤教諭と当時国語科の高木東一教諭が佐佐木信綱邸に訪れ、改訂を依頼。現在の歌詞になった=表参照。当時の状況を考えると、これだけの改訂でこの校歌が生き残れたことは実に幸運なことだったといえる。
共学化で再び危機も
同年に共学化され、男子が入学すると、再び存続の危機に立たされた。男子生徒から「キーが高く歌いづらい」「歌詞が男子向きでない」と改訂を求める声が噴出。学校新聞に特集が組まれ、新聞部の生徒を中心に学校側と交渉が繰り返された。しかし、上級生の女子たちが猛反対。歌詞変更の直後だったことや佐藤教諭の説得もあり、実現には至らなかったという。1957(昭和32)年には「第二校歌」制定の動きも出たが、同校歌に勝る作品は現れず、その後立ち消えとなった。
このように幾度もの危機に見舞われた校歌だったが、延同様に平沼から多くの音楽家を輩出した佐藤教諭らの尽力により、奇跡的に今日まで歌い継がれている。「平沼高校校歌は校舎が変わり、人も変わっていく学校の歴史の中で、唯一伝統を保持していくシンボルなのです」(佐藤教諭)
近年ではこの校歌の文化的価値を広く伝えようと、佐藤教諭の教え子たちである卒業生らが中心となって講演会や音楽イベントなどを開き、その歴史的なエピソードと共に歌い繋いでいる。
音楽劇でタイムトリップ
同校の同窓会(真澄会)ではこうした歴史を広く知ってもらおうと、創立125周年記念のファイナルイベントとして3月15日(日)、校歌の誕生から現代までを描く『校歌史タイムトリップ 音楽劇・学びの道は過去へ未来へ』を西公会堂で開催する。プロの音楽家や演出家、舞踊家など同校の卒業生たちが携わり、学校史をベースに創立から過去や未来を行き来するオリジナル脚本と音楽で構成。一般鑑賞できる有料公演として予定されている。
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