マルエツ六ツ川店前にあった掲示板は１月19日に撤去された（１月18日撮影）
市民がイベントや事業の案内を目的にチラシを貼るために横浜市が設けている「公共掲示板」の撤去が続いている。南区内では１月中旬に３カ所が撤去され、２カ所を残すのみとなった。市はインターネットなどの広報方法が多様化したことで、掲示板の役割は終えたと判断。２０２４年度までに残りの約20カ所も撤去する予定で、30年前には市内に１６０カ所以上あった掲示板は、設置開始から約50年で姿を消すことになる。
南区内 残り２カ所に
公共掲示板は「まちの広告板」の名前で市内の駅の近くやスーパーのそばに設置されているもので、自治会町内会が設けている掲示板とは異なる。掲示できるのは、縦60cm×横42cm以内のもので、１回につき10日以内などの利用規約がある。
市都市整備局景観調整課によると、１９７３年の屋外広告物法の一部改正によって、貼り紙や立て看板といった広告物の即時除去が可能になったことから、その代替手段として75年に公共掲示板の設置を始めた。93年度まで新設を続け、最も多い時には市内に１６５カ所あったという。
ネット普及を理由に
しかし、インターネットの普及やフリーペーパーが広まったことを受け、市は「広報媒体の多様化など、代替手段の確保が容易になった」として、２０１４年度に掲示板を全て撤去する方針を決めた。以降、徐々に撤去を進めている。
南区内では昨年９月に横浜商業高校の正門前にあった掲示板が撤去され、今年１月中旬にはマルエツ六ツ川店前、阪東橋駅東口、南永田団地内のバス停横にあった計３基が撤去された。これにより、区内の掲示板は、そうてつローゼン六ツ川店前と通町のりそな銀行前の２カ所となった。
マルエツ六ツ川店前の掲示板が撤去される前日の１月18日に本紙が確認した際は、不用品回収業者や個人のピアノ教室のチラシのほか、市が旧市庁舎を約７７００万円で売却したことに反対する市民団体のものなど、計10枚が貼られていた。
市内では１月中に南区の３カ所を含む８カ所の掲示板が撤去され、残るのは11区の約20カ所となった。市は残りの掲示板も24年度までに撤去するとしている。市によると、設置方法などによって異なるが、掲示板１基あたりの撤去費用は約30万円だという。
掲示板は市の委託業者が巡回して状況を確認し、板面部分の劣化が確認されれば、補修などを行ってきたという。
地域へ移管も
市は掲示板を撤去する際に近隣の自治会町内会に希望を聞き、広報目的で利用することを望んでいる場合は、無償で譲渡するようにしている。
浦舟町の浦舟複合福祉施設前にあったものは、昨年11月に浦舟町西部町内会に移管されている。同町内会によると、近くに町内会の掲示板がなかったことから譲渡を希望したという。
｢貴重な宣伝場所｣
掲示板に自らが所属する団体が行うイベントのチラシを掲示したことがあるという男性は「自分たちの活動がネットで拡散されることは期待できない。偶然目にしてもらえる公共掲示板は、活動を知ってもらえる貴重な宣伝場所」という。掲示板の近くに住む女性は「チラシを貼る板の部分が割れて壊れていたり、風でチラシが破れたり飛ばされることもあったので、安全性や見た目を考えれば、撤去してもいいと思う」と話していた。
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