さがみはら中央区・緑区 社会
公開日:2026.07.02
北里大学学祖 北里柴三郎を大河ドラマに 生誕地起点 署名活動
2024年7月3日に発行された新千円札の肖像画に採用された、北里大学(南区北里)の学祖、北里柴三郎。破傷風菌の純粋培養や血清療法の確立など数々の功績を残し、「近代日本医学の父」とも呼ばれる人物だ。その生涯を「NHK大河ドラマで伝えよう」という機運が高まっている。北里博士の生誕地である熊本県小国町では2025年に実行委員会が設立され、現在はドラマ化実現に向けた署名活動を展開中だ。同大学でも活動を後押ししており、学内外でPRに努めている。北里大学の砂塚敏明学長に話を聞いた。
学長に聞く
――大河ドラマ化を目指す活動について教えてください。
熊本県小国町の渡邉誠次町長が中心となって進めている活動です。2025年7月に実行委員会が立ち上がり、10月から署名活動を始めました。まずは10万人分の署名を集め、NHKへ届けようというものです。
ただ、私自身はもっと前から思っていました、「なぜ北里柴三郎は大河ドラマにならないのだろう」と。(師弟関係のある)野口英世はドラマにもなっていますし、多くの偉人が映像化されています。しかし北里博士は、これだけの功績を残しながら十分に知られているとは言えません。今回、新紙幣の肖像になったことで注目が集まりました。今こそ、その人生や功績を多くの人に知っていただく良い機会だと思っています。
――学長から見て、北里柴三郎の人生で最もドラマチックな場面はどこでしょうか。
やはりドイツ留学時代ですね。北里博士は破傷風菌の純粋培養に成功しました。破傷風菌は酸素を嫌う「嫌気性菌」です。当時、誰も成し得なかった純粋培養を世界で初めて成功させたわけです。しかし本当にすごいのは、その先です。普通の研究者であれば、世界的な発見をした時点で終わるかもしれません。論文を書いて評価を受けて満足することもあるでしょう。ところが北里先生は違いました。研究成果を使って人を救いたいと考えたのです。そこで生まれたのが血清療法です。免疫の力を利用して病気を予防・治療する考え方で、現在のワクチンや免疫療法にもつながっています。
研究だけで終わらず、治療法として社会に役立てた。私はそこに北里先生の真価があると思っています。学問のための学問ではなく、人を救うための学問だったのです。
――ほかにもドラマになる場面はありますか。
香港でのペスト菌発見もそうです。当時、ペストが猛威を振るう中で現地へ赴き、わずか2日ほどで病原菌を突き止めました。微生物学者としても世界最高レベルだったことを示す出来事です。
また、後年には政府と対立しながらも、自ら伝染病研究所を設立しました。正しいと思うことを貫く強い信念があったのだと思います。そして、その姿勢に共感した人たちが支援した。福沢諭吉をはじめ、多くの人物が北里先生を支えています。明治という激動の時代を背景に、人とのつながりや挑戦の物語がある。大河ドラマとして非常に魅力的な題材だと思います。
――ところで、学長が北里先生を知ったきっかけは何だったのでしょうか。
最初に知ったのは小学生の頃です。野口英世の伝記を読んだ時ですね。その中に北里先生が出てきた。ただ、その時は「すごい人なんだな」という程度でした。その後、勉強していく中で「野口英世の先生なんだ」と知るようになりました。大学は薬学部に進もうとしていて、北里大学にも合格したんです。そうしたら父親が「北里柴三郎が作った大学なんだから行け」と言ったんです。昔の人はみんな北里柴三郎を知っていました。それくらい有名な人物だったんです。
――北里精神を強く意識するようになったのはいつ頃でしょうか。
学生時代、大村智先生(北里大学特別栄誉教授、2015年ノーベル生理学・医学賞受賞)に指導を受けていました。そこで大村先生はよくおっしゃっていました。「私は北里で2人目のノーベル賞だ。本来なら北里柴三郎先生こそノーベル賞を取るべき人物だった」と。そういう話を聞く中で、北里先生の偉大さを改めて学ぶようになりました。そして学長になった時に、改めて「北里柴三郎とは何だったのか」を考えたんです。正直に言えば、北里大学の教職員であっても、本当の意味で北里精神を理解している人ばかりではないと思います。だから私は「北里精神をもう一度学び直そう」と言い続けています。
――最後に市民へメッセージをお願いします。
ぜひ署名活動にご協力いただきたいと思います。インターネットで簡単に参加できます。ご本人だけでなく、ご家族やご友人にも声を掛けていただければうれしいですね。北里柴三郎の功績は、もっと多くの人に知られるべきものです。大河ドラマ化を通じて、その生き方や精神が全国へ伝わることを願っています。そして北里大学をもっと身近に感じていただきたいと思っています。
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