授業ではメインの教員の他にサポート教員(左に立っている女性)が教室内をめぐり生徒の質問などを受ける
橋本高校（内田和幸校長）では、知的障がいがある生徒がない生徒と一緒に学ぶ「インクルーシブ教育実践推進校」として今年４月からスタートしている。新型コロナの影響もあり、開始してまだ半年程だが、教員の工夫により、個人の多様性に配慮した学校づくりが浸透している。
「インクルーシブ教育」とは、多様性の尊重のため、障がいがある人とない人が共に学ぶ仕組みのこと。学校現場では一人ひとりに必要な合理的な配慮・支援を行うことが求められている。神奈川県がインクルーシブ教育の実践を始めたのは３年前だ。県内は先に足柄、茅ケ崎、厚木西高校の県立３校で先行導入。同年10月には「県立高校改革実施計画II期」が発表され、橋本高校や上鶴間高校（南区）など11校が実践推進校に指定、第２陣として今年４月からスタートした。
選択肢の一つに
橋本高校では今年、軽度知的障がいのある生徒14人が入学。８クラスに分かれ在籍し、基本的には通常学級（40人程度）で授業を受ける。その際、教科担当教員の他にサポート教員が１人付き、当該生徒だけでなく一般の生徒の理解補助を行う。また週２回、障がいのある生徒には卒業後の進学先や就職について考える「キャリア教育」の授業があり、３〜４人の少人数制で２人の教員が授業にあたる。
インクルーシブ教育の良さとして、通常授業にもサポート教員が付くことから、クラス全体の理解度の向上が期待される。さらにキャリア教育を担当する教員は、「いろいろな人がいるのが社会なので、それを学生のうちから体験するのは双方にとって大事なこと」と話す。また、養護学校などでは部活動の頻度が月１〜２回と少ないが、通常校だと部活動に積極的に取り組むことも可能だという。同校関係者は、「必ずしもインクルーシブ教育がいいというわけではない。知的障がいのある生徒にとって進学先の選択肢が広がったということなので、橋本高校や養護学校などの特性をよく知った上で、自分に合う場所を選んでほしい」と話している。
誰にでもわかりやすい授業を
新型コロナウイルス感染症の影響で６月から段階的に登校がスタートしたため、インクルーシブ教育が始まってまだ半年程。内田校長によると、同教育の導入で授業内容を「大きく変えたわけではない」と話す。同校では、ＩＣＴ（情報通信技術）や視覚教材を授業に取り入れることで「誰にでもわかりやすい授業」作りに力を入れている。例えば、国語の授業では、現代文の感想をスマートフォンから入力・提出させ、即座に全体モニターで共有する。文字を書くのが苦手でも、スマホのフリック入力ならできるという生徒もいるため、授業の効率化と共に障がいのある生徒への配慮もされ、双方にとってプラスになる形だ。キャリア教育を担当する教員は、「少人数制で授業をしているが、コミュニケーションも取れるし教えていてやりがいを感じる。彼らの卒業後について、どんな選択肢があるか自分も一緒に勉強していきたい」と意欲を見せる。
同校には、２００４年から神奈川県在住の外国人を対象にした特別募集枠を設けており、現在全校で約40人の生徒が通っている。内田校長は「さまざまな国の生徒が通っているため、多様性への理解や配慮の土台が整っているのでは」と話している。
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