町田市野津田町に本社を構える株式会社マナ オルゲルバウ(代表取締役 松崎譲二・中里威)が、東日本大震災で破損した水戸芸術館のパイプオルガンの修理を4カ月かけ行い、3月に竣工した。水戸市民から感謝の声が届いている。
同芸術館のパイプオルガンを同社が約2年間かけ、1990年に作り上げた。以来、21年間定期的なメンテナンスなどを行い守り続けてきたが、東日本大震災が発生し、破損してしまった。
「水戸芸術館のパイプオルガンは我々が製作した中で最も大きく、最も製作期間を費やしたもの。後にも先にもこれを上回るものは作れないと思うので、もちろん思い入れもある」と松崎氏は話す。
昨年11月1日に復旧工事を着工。パイプ修繕から調律・整音などを行い3月5日、全ての作業を終えた。
4月1日には「復活記念コンサート」が開催され、水戸市民を中心に定員300人の会場に1800人が来場。目を閉じて聴き入る人や涙を流す人など、多くの来場者は心を癒された。
「震災から1年が経過し、皆が待ち望んでいた音色を聴くことができました。修理して頂き、多くの水戸市民が感謝をしています」と同芸術館は話す。作業中には同社スタッフに「頑張って下さい」と声をかけ、差し入れをする市民もいたという。
地域の愛を胸に
期待に応える
修理費は、水戸市や市内の各ロータリークラブ、さらには一般市民からの寄付などで賄われた。水戸芸術館ではパイプオルガンの寄付を募ることはしていなかったが「また、あの音色が聞きたい。少しでも寄付したい」と地元住民から申し出があったという。
「製作して頂いたマナ オルゲルバウさんに直して欲しい」と同芸術館や音楽関係者らが声を上げ、昨年10月に契約が成立。震災から約8カ月後、修理を行うこととなった。
声援と同時に地域から愛されているオルガンを修理する責任も痛感した。「何としても期待に応えたかった」と松崎氏は振り返る。
想定外の破損から
「一新させた」
同芸術館のパイプオルガン内部に組み込まれたパイプの総数は3283本。そのうち約1000本のパイプが揺れの衝撃で歪んだり、傷ついてしまい、210本は新しく作り直した。
「パイプの原料はスズとナマリの合金。頑丈そうにみえますが、子どもでも少し強く触ったり叩いたらすぐに曲がってしまうほど柔らかいです」と松崎氏。
外から見える両端の最も大きなパイプまで落ちてしまい(=写真左)、まさに想定外の破損だった。「不幸中の幸い。人にあたって怪我がなく本当によかった」
大きな揺れが起きても耐えられるようにワイヤーでつるし、再び破損しない作業を入念に行った。さらに、20年以上経っているオルガンを「一新させる」と音色に関わる機能を追加した。
今では、都内の学生らが練習に足を運び奏でるほどの楽器。中里威氏は「今まで以上に良いオルガンに生まれ変わった。人を癒す楽器として、復興支援はもちろん、様々な人の役に立てば」と笑顔をみせた。
東日本大震災の大きな揺れで破損したパイプオルガン。両端の大きなパイプが落ちてしまっている(水戸芸術館 提供写真)
野津田の製作所で作業する松崎氏(4月7日撮影)
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