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公開日:2023.07.20
町田リス園
「就労支援の場」として35年
垣根のない共生空間に
特定非営利活動法人が運営する動物園「町田リス園」(薬師台)が障害者の就労支援の場として今年、開設35年を迎える。年間10万人以上の来園がある町田市の人気スポットは障害者と健常者、動物が垣根なく共生する空間となってきた。
開園は1988年12月。飼育員として勤務し続けてきた福田啓一さんのレポートによると、当時の町田市市長である大下勝正氏が「町田には動物公園が必要」という考えをもっていたことが、開園のきっかけになったという。市内に動物園が無かったことや大規模団地に囲まれる街において、ペットを飼えない子どもたちが生命について学ぶ機会が少ないなどの理由があったと福田さんはつづる。
一方で、市が当時、障害者福祉政策を重視していたことが、リス園を就労支援の場とする要因になったようだ。養護学校を卒業した生徒が通う受け皿の1つという位置づけで、訪れる人たちにリスとのふれあいを楽しんでもらいつつ、障害者と健常者、動物が垣根なく共生する空間として、その意味と問題を考えるきっかけとなる場所にしたいという思いが背景にはあった。
当初は「動物園の作業は大変」というイメージが先行し、リス園で働きたいという障害者が集まらなかったというものの、ようやく就労支援の場として活動し始めると、障害のあるスタッフは入場チケットを切る役割や園内に開放されたリスが逃げないようにするためのドアの開け閉めなど、一人ひとりに合った仕事を任されるようになった。
それは今も変わらず、現在、障害者スタッフの指導にあたる同園の多田麻衣さんは「一般的に内職的な仕事が多い就労支援の場で、動物と接する業務があるのは世界的にみても珍しいのでは。今は働きたいという要望を多くいただいている」と話し、「動物たちの癒しの効果もあるのか、皆さん、いきいきと働かれています」と笑顔をみせる。
「知ってもらいたい」
リス園は人気を集め、入園者数は近年、年間10万人を超える。そのなかで、同園の谷博夫・副園長は「当園が就労支援の場であることをもっと知ってもらいたい。町田の観光スポットの1つを支えているのが障害のある人たちということの周知が進めば」とする。
多摩地域で障害児の支援などを行っている影近卓大さんは「就労支援の場は、障害のある人のためにつくるのではなく、多くの市民が楽しめる場が結果的にそうだったということが理想的なことだと考える。リス園の事例は価値あるものと感じる」としている。
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