綾瀬市の内藤勝則副市長ら複数の幹部と、市議会の古市正議長が今年1月から2月にかけて、市内の自治組織が市議会に提出しようとした陳情書に対し、提出を見送るよう促していたことがわかった。陳情提出への事前介入は住民の政治参加に対する圧力ともとれ波紋を呼びそうだ。
識者「あってはならいこと」
陳情の提出を準備していたのは会員が市全体に及ぶ自治組織で、陳情は市が市役所南側で開業をめざす道の駅の早期整備を求めるもの。開業予定は2022年度だったが現時点で27年度にまでずれ込んでいる。
陳情は、能登半島地震を受け「防災活動にも資する施設とするべき」との意見も盛り込み3月議会に提出する予定だったが、同組織の複数の役員が市の幹部2人と副市長、議長と相次いで面会して提出を断念した。
複数の関係者が「最終的に議長の話を受けて提出を見送る方向に傾いた。苦渋の判断だった」と話している。
市の幹部が陳情の件で接触したのは同組織の複数の役員で、今年1月19日と2月1日の2回。自治組織を所管する部と道の駅の整備を所管する部のトップが役員に面会を求め、市役所の外で会った。その際、それぞれの立場から陳情提出の影響について考えを伝えた。
さらに内藤副市長も自ら役員に連絡を入れ、2月9日に市役所の外で複数の役員と面会。この席で副市長は、陳情提出による組織への影響や議会での審議の見通しについて見解を述べ、「3月議会の様子を見て本当に必要ならば6月に出すのも一つの手」などと伝えた。「提出する前に議長と話をしては」とも述べ、市議会の古市議長との面会を調整した。
これを受けて古市議長は2月15日に、議会の応接室で複数の役員と面会した。道の駅整備について、「議会内では慎重派が多数」と伝え、今夏の市長選挙にこの陳情が与える影響にも言及した。
接触認める
本紙の取材に市の幹部2人と副市長、議長は、同組織の役員らと会い、陳情が与える影響について自らの考えを直接伝えたことを認めている。
内藤副市長は、「(陳情を出すことに)全員が賛成していないなかで、組織を分けるような話にならないか気になった」などと釈明。「陳情を出される方にプレッシャーを与えてしまったのであれば私の言い方が悪かったとも思う」とした。
幹部らの動きについて古塩政由市長は「接触の一部は把握していたが、内容の詳細は後から報告を受けて知った」と回答。その上で「道の駅を進めるうえで推進の声は事業の後押しになる。陳情は市民の声を議会に届けるための大切な権利であり、そうした市民の行動を制約するような動きがあってはならい」とコメントした。
古市議長は「ものの言い方には気を付けなければいけないという反省はあるが、結果的にこの団体が総意として陳情を提出しなかったことを考えれば影響はなかったと考えている」と述べた。
議会への陳情について地方自治が専門の神奈川大学法学部の幸田雅治教授は、「陳情は住民にとって重要な権利のひとつ。提出に至った思いや主張の理由を述べる機会を議会側が設け、これにしっかりと応答することが議会に求められている」とコメント。さらに「陳情を出す出さないについて議会や行政が圧力を与えることはあってはならないことで問題がある」とも指摘している。
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