厚木市鳶尾の「もりや亭」で個展を開いている 高部 道男さん 厚木市関口在住 72歳
自由な感性、無限の表現
○…色鮮やかな線や点が画面を自由に埋め尽くす。見る人によって花火にも、草花にも、あるいは心の奥底の感情のようにも映る。そんな独創的な作品が並ぶ個展を「もりや亭」で開いている。活動名は「夢有(むう)」。地元の生まれ育った地で、「子どもからお年寄りまで、すべての人に何か思いが届けば」と、訪れる人との出会いを心待ちにしている。
○…厚木で生まれ育った。幼少期の交通事故による大けがが、自身の死生観に大きな影響を与えたという。絵の原体験は中学生の時。美術教師の「見た色と自分の思う色は違っていい」という言葉が心に響いた。当時流行した音楽や文化にも触発され、独自の表現を追求し始めたが、家庭と仕事が中心になり一度は筆を置いた。転機は70歳。友人の勧めで創作活動を再開した。
○…「絵を描くことだけは、集中して夢中になれた」。その作風は「サイケデリックアート」と評されることもあるが、本人は「思うがままに描いているだけ」と意に介さない。決まったモチーフを描くのではなく、その時々の画材を手に、心が向かうままに色を重ねる。「自分の手が次に何を描くのか、自分でも分からない。そこに絵を描く楽しみがある」と創作活動の妙味を語る。
○…妻と娘の3人暮らし。同じ敷地には息子夫婦と幼い2人の孫も住み、一緒に絵を描くこともあるという。孫の自由な感性や反応に心が躍る。創作活動の傍ら、打楽器のボンゴにも熱を入れ、教室に通う日々だ。「今の自分にブレーキをかける必要はない」。70歳からの挑戦は、人との縁を原動力に、広がりを見せている。グッズ制作や楽曲の誕生といった形で次々と実を結び、その活動はさらに勢いを増している。