厚木・愛川・清川 社会
公開日:2026.07.17
真の「ともいき」に向けて 神奈川県が歩む未来へのかけ橋
相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で45人が殺傷された2016年の事件から今年の7月26日で10年となる。
神奈川県ではこの事件を受け、同年に県議会と共同で「ともに生きる社会かながわ憲章」を策定。「命の尊重」「地域社会の実現」「障壁・差別の排除」「県民総ぐるみの取組み」を4つの柱に掲げた。また、障害者を入所施設に隔離する大規模施設中心の福祉から、地域社会の中で自立して暮らす小規模運営の方針へ転換。「当事者目線の福祉」と「地域移行」へ舵を切ってきた。
■当事者目線への転換
県が推進する「当事者目線の福祉」とは、障害者本人の意思や希望を出発点とする取り組み。言葉での意思疎通が困難な重度障害者であっても、表情や行動の分析から本人の願いを推し量る「意思決定支援」の仕組みを構築し、条例化を背景に推進してきた。この理念を具現化するため、県は地方独立行政法人「神奈川県立福祉機構(KanaWel)」を設立。科学的なケアや高度な専門人材の育成、最先端の福祉研究を県全体に波及させる体制の運用が始まっている。
さらに、障害者自身が「ともいきマイスター」として自ら魅力を発信するなど、障害者を「支えられる存在」から「社会の主役」へと引き上げる試みも進められている。
■「地域移行」への挑戦
もう一つの柱が、入所施設を離れ、住み慣れた街で共同生活を送るグループホームなどへ移り住む「地域移行」だ。津久井やまゆり園の再建にあたっては、定員を半数に減らして個室化し、小規模なユニット単位での生活へと移行させた。
神奈川県独自の動きとしては、地域移行を専門に担う「かながわ地域生活移行スペシャリスト」という専門人材の養成を推進。さらに精神障害者の地域移行に対しても、退院を経験した当事者である「ピアサポーター」が病院を訪問し、自立に向けた相談やアドバイスを行う取り組みを活発化させている。
■心のバリア
しかし、先進的な制度設計の一方で、医療的ケアが必要な重度障害者を受け入れられるグループホームやヘルパー、医療機関の不足も挙げられる。県は補助金などを設けて地域の受け皿づくりを後押しするが、需要には追いついていない。
さらに地域社会の「心のバリア」も解消されていない。県が2024年に行った意識調査では、「世の中には障害を理由とする差別や偏見があると思うか」との問いに、79・3%の県民が障害者への偏見や差別を感じると回答している。また、「ともに生きる社会かながわ憲章」の認知度への設問では「知らなかった」が68・6%を占めるなど、理念が浸透しきれていない現実がある。
■真の「ともいき」へ
神奈川県共生推進本部室は「事件を知らない若年層も増えてきている。事件を風化させないためにも県の考えを周知し、インクルーシブ社会を推し進めていきたい」と話している。
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