最後の夏はあっけなかった。県大会初戦に背番号「1」を背負って先発。2回に四球や味方のエラーで満塁のピンチを迎えた。「後続を断ち切る」と気持ちを奮い立たせようとした時、監督が動いた。「投手交代」。エースは無失点のままマウンドを降りた。「その後のことはほとんど覚えていない。それほど衝撃で、自分も予想していなかったことだったからだと思う」。次に思い出せる記憶は対戦相手が喜びを爆発させているシーン。チームはコールド負けを喫していた。
「高校野球」が大好きだった。1年生の時、ベンチから見たグラウンドの熱気、先輩の躍動する姿、ブラスバンドの応援―。魅了されて、憧れて、打ち込んできた。その最後は、あまりにも悔いが残るものだった。「野球部の仲間との絆は強く、今も年末に必ず集まるがあの試合の話だけはあまりしない」
あれから15年近くの月日が流れた。それでも未だに夢に出てくる試合前の光景。ブルペンでは絶好調。「またやり直せる」―。そう思った瞬間、目が覚める。
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高校野球を「不完全燃焼」で終えたこともあり、野球は大学でも続けた。現在は、テレビ朝日のアナウンサーとして主にスポーツ実況を担当している。「やっぱり野球が好き。高校で未練があったからこそ、ここまで携わり続けているのもある」。球児たちのひと夏を追う番組「熱闘甲子園」の取材では、県大会初戦敗退の経験が活かされている。「甲子園から一番遠い場所で夏を終えたからこそ選手をリスペクトして見ることができる」。猛練習してきた自分がかすりもしなかった舞台で活躍する球児たち。その凄さは、誰よりも一番よくわかっている。
「子どもへ夢を与えることに関われる」―。自身も野球に興味を持ったのは横浜高校で当時大活躍した松坂大輔投手の快投をテレビで見てから。アナウンサーという立場を通して、どこかの少年に夢を与えられる。今はそんな仕事が誇りだ。
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