横須賀市教育委員会は今月22日の定例会で、津久井にある旧万代順四郎・トミ夫妻別邸(現・市立万代会館)を市の指定重要文化財とすることを議決した。市では地元有志などによる「保存活用推進協議会」が昨年5月にまとめた提言を下敷きに、維持管理や活用の計画策定を始めている。
この建物は1928(昭和3)年頃に竣工、帝国銀行頭取やソニー会長などを務めた財界人の万代順四郎氏が別邸として37年に取得した。47年からは自邸として暮らし、自給自足の生活をしていたという。78年に建物と敷地が横須賀市に寄贈され、その翌年から「市立万代会館」として無料公開されている。玄関・書院・居間・サンルームと増築棟の茅葺が特徴で、市の諮問機関である文化財専門審議会は「横須賀の初期別荘建築のうち、木造としては唯一完形を伝える遺構として学術的にも高い価値を有している」と評価した。
「保存活用」市民訴え
市は2014年、「施設配置適正化計画」で同館を10年以内に廃止する方針を打ち出した。老朽化などを理由にしたものでこの動きに対し、これまで建物の補修を行っていきた有志のボランティアや建築の専門家、地域住民ら12団体が集まり、保存活用の推進協議会を発足。要望書の提出や意見交換会などでの訴えを受けて17年2月、市は施設の存続に転換した。
その後、同会では保存整備に関する検討部会を設け、昨年5月に提言書を市に提出。耐震性の問題から昨春以降、建屋は閉鎖されており、庭園のみの開放(火・土・日)という状況にあり、市では再公開に向けて、同提言書を基に耐震や防火・維持管理などの計画策定を進めている。
市民の宝に
市の指定重要文化財の「指定」は、歴史的建築資産として保存がより厳格化されることを意味する。今回の決定を受けて、同会会長の根岸峰夫さん=写真=は「廃止を打ち出されたときは、このような結果になるとは考えられなかった。文字通り市民の宝になるよう末永く存続してほしい」と語った。また、横須賀建築探偵団の富澤喜美枝代表は「建物の価値だけでなく、教育や地域に私財を投じた万代氏の人物像や生き様、精神的な教えを学ぶ場所にしていきたい」とコメント。庭園を活用した年4回の「テラコヤ」を開催している伊東ひろみさんは「市の指定によって、どのように変わっていくのか。多くの人に注目してもらえる場所になってほしい」と話した。
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