首都防備を目的に、明治から大正にかけて建造された東京湾要塞の一つ、西浦賀の「千代ヶ崎砲台跡」の保存・活用を進める横須賀市に対して、エリア南側の堡塁(ほるい)部分を所有する民間事業者のファーマシーガーデン浦賀が見学会の開催などで一体的な運用を望んでいる。同砲台跡は、東京ドーム3個分とされる広大な敷地に築かれた軍事施設であり、市が国の史跡指定を受けて管理しているのはその3分の1にあたる場所。民有地にも貴重な戦跡が遺されており、同事業者は、市が予定している今年度末の一般公開に足並みを揃え、戦跡を利活用していきたい意向だ。単独での事業展開は、駐車場の確保や集客の面で厳しいと判断しており、官民連携の仕組みづくりに向けた協議の場を求めている。
千代ヶ崎砲台は明治終わりの1892年に起工し、大正終わりの1925年に完成した。全国に11ある戦艦の砲塔を備え付けた砲塔砲台の第1号で、近年まで存在が知られていなかった。このほかにも敷地内には観測所や砲座、煉瓦積みの構造物が120年以上経った今も良好な状態で残されている。
市は2015年に国の史跡指定を受けて見学コースの設定や休憩施設、説明板の設置など公開に向けた整備を進めている。ただ、その場所は全体の一部であり、歴史的な意義や軍事的な役割を訪れた人により深く理解してもらうには、敷地全体を俯瞰して観る必要がある。
先の事業者は歴史遺産の活用を軸にした土地利用を目指しているが、単独での展開は駐車場の問題や集客などで厳しいのが実情。経営的判断から別の利用形態に舵を切らざるを得ない状況もあり、需要が高い映画やドラマ、CMのロケ地として貸し出すビジネスを事業の主力にしていくことを一方で考えているという。となれば敷地全体を常時、非公開とすることになり、貴重な戦跡が閉ざされてしまう事態にもなりかねない。
市は、東京湾要塞の整備基本計画の中で「周辺の関連施設も所有者と協議を進めながら一体として保存活用を図りたい」との方針を示しているが、「史跡指定を受けたエリアは規制が厳しく、民間と同じ歩調で事業を展開する難しさがある」と担当者。当面は見学コースに一部組み込むことを考えているという。
同事業者は「千代ヶ崎砲台跡は、圧倒的な絶景とスケールを誇る横須賀の財産。当施設の来訪者から同時公開を求める声も少なくない」と話しており、一大観光拠点としての整備と活用に向けた協力体制の構築を呼び掛けている。
東京湾要塞研究家 デビット佐藤さんの話
千代ヶ崎砲台跡で、市が管理しているのは主たる部分ではあるが、民有地を含めて同砲台跡となる。民有地側には、右翼観測所と堡塁部分が残されており、大正末期、日本で最初に造られた海軍砲塔砲台の遺構もある。民間事業者は経営という視点を外せないため、市の方針とすり合わせていくことは難しいが、官民連携で施設を一体活用していくことが望ましい。抜群のロケーションを誇るこの場所を私は「三浦半島最後の秘境」と呼んでいる。給排水施設や電気などのインフラが整備されれば、文化・教育・観光が一体となった横須賀の新しいスポットとなるはずだ。
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