西逸見町の浄土寺は、境内の一角に井戸水を使った非常用の水洗トイレを整備した。地下水をくみ上げて水洗し、下水管に流す仕組みで、災害などで停電・断水があっても利用できる。県内では公園や公共施設に設置する例が増えており、横須賀市内では初めて。
浄土寺境内には墓地の前など数カ所に井戸があり、電動のポンプで水をくみ上げていた。「災害時に電気が止まった際、すぐに使えるようにしたい」と手動に改修。この工事に関連して井戸について調べていたところ、茅ヶ崎市の井戸専門事業者、株式会社井戸屋が手掛けている「井戸水を使った非常用トイレ」を見つけた。
同社は、東日本大震災の被災地支援に出向いた際、避難所などで「水が使えず不衛生」「汚れや臭いが酷い」「我慢して体調を崩した」といったトイレ事情を目の当たりにした。「首都圏の人口密集地などで災害が起きると、さらに深刻になるのでは」と、井戸水を用いた水洗トイレを開発。下水管に直結する小さいマンホールを設け、この上に組み立て式のトイレを設置して井戸水で水洗する仕組みを考案した。一定量の水で流すため、便器も汚れにくく臭いも少ないという。通常時は駐車場などのスペースとして活用でき、県内では公園や区役所、物流センターなどでの施工実績がある。
地域に寄り添う
同寺は震災時避難所の逸見小に隣接している。「地域の方々が集まる場所として、『寺』が社会課題にも応えていくことは大切だと感じていた。災害時に活用することができれば」と副住職の逸見世自在さん。また、同寺の檀家から「地域のために役立ててほしい」と寄進を受けたことも後押しとなった。さらに、同社から「市内には災害時の水洗トイレがない」と聞いたことも理由の一つだという。
今年7月ごろから、もともとあった井戸を100m近くまで掘り下げ、毎分40リットルの水量を確保。掘削作業を終えて、トイレの土台を4基分整備し、9月半ばに完成した。便器やテント・手押しポンプなど道具一式は、専用ボックスに入れて保管されており、10〜15分程度で組み立てができる。
今後は、「境内での催しなどの折に設置して、紹介する機会を設けることができれば」と話している。
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