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横須賀・三浦 人物風土記

公開日:2026.03.20

長編アニメーション映画『花緑青(はなろくしょう)が明ける日に』を手掛けた
四宮 義俊さん
三浦市出身 45歳

  • 四宮 義俊さん (写真1)

潮騒の記憶、銀幕に刻む

 ○…潮風に吹かれ鉄が赤茶けてゆく質感、夏の重たい湿気、坂道から見下ろす濃紺の海。上映中の作品には、中学生まで過ごした三浦市の記憶が息苦しいほどのリアリティで刻まれている。「自分が本当に知っている場所でないと、物語の強度は生まれない」。故郷への深い洞察を持って語る眼差しは、静かだがどこまでも温かい。

 ○…表現への道を決めたのは中学時代。日本画専攻だった恩師に勧められ、美術の門を叩いた。東京藝術大学で日本画を追究し、伝統的な技法と向き合い続けた経験が、背景美術に重層的な手触りを与えている。緻密な構図の中に、海辺特有の空気の重みや物の経年変化といった「物質感」を流し込む。日本画の静謐な美学を、躍動するアニメーションへと翻訳した。「本当は作品を見てもらいたかった」。昨年他界した恩師への想いも胸に、三浦で育んだ感性を銀幕へと昇華させた。

 ○…作中には三浦一族の歴史や、かつて親しまれた花火大会の面影、見慣れた街並みをも投影した。当たり前すぎて見過ごしてきた古い建物も、光の当たり方一つで物語が宿る。自分たちの街に眠る美しさをもう一度分かち合いたい-。表現者として、そして一人の”三浦人”としての純粋な願いも、その筆先には込められている。

 ○…長く、地元から離れて暮らす日々を送るが、帰省の折には、三浦海岸沿いの道を走り、夜の海を眺めてから帰路につく。どれほど遠くへ羽ばたこうとも、心の錨は常にこの渚に下ろされたままだ。「今後は元々の専門である平面絵画と、映像を合わせたような新しい表現を模索したい」。高みを目指し、歩みを止めることはない。故郷で育まれた感性を武器に、さらなる芸術の地平を見据える。

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