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藤沢 社会

公開日:2020.09.04

海水浴場未開設「異例の夏」
海の家関係者ら 安全下支え
今夏休業も調整役

  • 海水浴客にタトゥーを露出しないよう声をかける向島さん(上)と8月最終週の片瀬西浜

 新型コロナウイルスの影響で県内全ての海水浴場が開設されない「異例の夏」が今シーズンの幕を閉じた。例年100万人を超える観光客が訪れる藤沢では、関係団体が一枚岩となって安全策を展開。関係者の尽力あって大きな事故もなく、穏やかな夏が過ぎ去った。中でも「黒子役」として今夏の安全を下支えしたのが、海の家を運営する組合関係者だ。

 「海岸は火気厳禁なので、バーベキューはすぐにやめてください」

 8月最後の週末となった29日の片瀬西浜。背中に「SECURITY」と印字されたシャツを着た男性が呼び掛けると、河口そばでバーベキューをしていた若い男女はいそいそと片付けに応じた。

 声掛けをしたのは海の家「白砂2」オーナーの向島恭憲さん(73)。47年前から毎夏西浜に出店している、江の島海水浴場協同組合でも最古参の組合員だ。ひと夏休業したのは初めての経験だったが、「これまで海のおかげで生活させてもらってきた。少しでもお役に立てれば」と見回り役を買って出た。

 パトロールは日に3回。自転車に乗り砂浜を見渡しながら、バーベキューやタトゥーの露出禁止などルールに違反する人がいれば注意する。

 毎日組合の事務所に詰め、2カ月間で見回りを休んだのはたった1日。真っ黒に日焼けした肌が、この夏の尽力を物語る。「ここは『天下の湘南』だからね。海の家の若い子たちにもいい環境を残してあげたい」。そう言って白い歯をのぞかせる。

「レガシー」来夏へ

 今夏の海の安全を巡っては、市など関係団体から成る市夏期海岸対策協議会が独自ルールを策定。海岸利用は遊泳客とサーフィンとの接触事故を防ぐため、海面をエリア分け。ライフセーバーに加え、市サーフィン協会なども連携し、海水浴場の運営ノウハウを持つ組合は「総合コーディネーター」役を担った。

 海水浴を楽しむ家族連れやカップル。この日も「湘南の海」には穏やかな時間が流れたが、「この景色の立役者は組合の人たち」と関係者は声を揃える。

 自らもエリア遵守など周知に奔走した市サーフィン協会会長で市議の佐賀和樹さんは「この状況を見て、海の家や海水浴場がなくてもいいのでないかという声があるが、それは違う。組合の人たちがいて、皆が協力したからこその成果だ」と強調する。

 市観光シティプロモーション課の板垣朋彦課長も「行政だけではとても乗り切れなかった。最初は不安もあったが、皆が同じ方向を向くことで一つになれた」と振り返る。「異例の夏を乗り越えることができたのは藤沢の底力。課題もあったが、今年のレガシーを将来につなげていけたら」と話した。

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