洗い立ての自転車で湘南サイクリングの準備は万端――。片瀬海岸に先月22日、自転車洗車専門店「SENSHA Bicycle湘南」が開店した。店長は北京パラリンピック金メダリストの石井雅史さん(48)=遠藤在住。現役引退を発表しての新たな挑戦は、「自転車整備不良事故を防ぎたい」という業界への恩返しだ。
ガラス張りの扉の外では江ノ電が走る。専用の台に乗せられた自転車は泡まみれ。ねじのゆるみ、挟まった小さな石、プロの目で細かく確認し、自身の愛車のように丁寧に洗い上げていく。
「見ているだけでも気持ちいいでしょう」と笑う石井さん。「自転車の洗車は競技者にはメンテナンスを兼ねた大切な日課の一つ。汚れを取り除くことはもちろん、故障前の小さなトラブルへの対処が不備の事故を遠ざける」と力を込める。
開店は、(株)洗車の王国(本社・伊勢原市)代表取締役社長で、石井さんの友人の相原浩さん(47)がサポートした。同社では昨年8月に都内で自転車洗車専門店をオープン。相原さんは「サイクリング人口はコロナ禍でさらに増えており、メンテンナンスの普及は交通安全に直結する」と話す。
また「石井店長就任はパラ選手のセカンドキャリアを応援するモデル事業」とも説明する。
引退後のパラ選手の就職先不足は以前からの業界課題。石井さんも現役引退後は藤沢市みらい創造財団でイベント講師などをしていたがコロナ禍で仕事が激減。新たな働き方を模索する中で出会ったのが、経験を生かした新事業だった。
開店に際しクラウドファンディングにも挑戦。独自のサービスとして車いすの洗車も開始した。
石井さんは「企業勤めでなく起業へ。パラ選手に限らず、障害者もそれぞれの好きなことを生かした仕事で社会に関われる時代。ワクワクします」とほほ笑んだ。
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