藤沢 文化
公開日:2026.10.30
サックス奏者・金子健治さん(86) いきいきシニア「元気の源」は
重厚な黒いケースを開けると、ベルベットの内張りに守られていたソプラノサックスが姿を現す。持ち主の金子健治さん(86・湘南台在住)は、柔らかなまなざしで管体を手に取る。「音色は肉声に近い感覚。自分の体が歌っている感じ」――。ひとたび楽器を構えると、全体の空気は一変。丸眼鏡の奥に、気高き情熱の炎が宿る。
生きがいはクリエイティブ
「音楽はプロだけのものじゃない。その人なりに人生を楽しめばいい」――。そう語る金子さんは幼少期に兄の影響でジャズや読書に親しみ、ステレオを2台並べてラジオから流れる音に耳を傾けた。「社交的ではなかった」と振り返る少年時代。その分、自身の世界に没頭できる音楽にのめり込んでいった。
藤沢市役所へ入庁後も音楽に対する熱は冷めやらず、職場の仲間とカントリーウエスタンやハワイアンのバンドを結成。ベースを担当した。やがて「メロディーを奏でたい」とフルートを手にし、表現の幅をより広げようと、40歳でサックスに転向した。市庁舎の所在地にちなんで命名したバンド名は「一丁目一番地バンド」。金子さんは「出世競争よりも、早く楽器の練習がしたいタイプだった」と懐かしそうに目を細める。
今では、ほぼ毎日のようにサックスを吹き鳴らす。「すぐに音が出るようにはなっても、納得のいく音を響かせるのは一筋縄ではいかない」と楽器の奥深さを説明する。「吹かない日があると、一日をやり損なったような感覚になる」。日々の暮らしに演奏が完全に溶け込んでいる。
自己を表現
演奏だけにとどまらず、自ら曲の創作も手がけるのは「誰かの真似ではない、自分なりのアイデンティティーを表現したい」という思いから。ピアノに向かい、これまで生み出した楽曲は約15曲。ふとひらめいたアイデアから一気に仕上げることもあれば、試奏と推敲を重ねて完成までに1カ月以上を要することも。「ジャズ特有のアメリカンスタイルにとどまらず、日本的な音階を使って社会問題をメロディーに落とし込むことが多い」と飽くなき探求心をのぞかせる。
同時に、音楽に負けずとも劣らない熱量で情熱を注ぐのが絵画だ。市職員時代、都市計画課や国民健康保険課などさまざまな仕事を担当したが、広報課や公民館での仕事が転機となった。広報紙の編集や挿絵の製作、市民まつりのポスターを手がけた経験が創造性を刺激し、今では「アートもまた生きがい」という。アート作品が紹介されている雑誌などからインスピレーションを受け、カラーペンや色鉛筆で独自の心象風景を表現。アフリカ大陸の輪郭に、ターバンを巻いた女性の顔を重ねた作品など、どの作品にも明確なメッセージが込められている。「生みの苦しみはもちろんあるけれど、悩む過程そのものが生きている証拠であり、楽しい苦しみでもある」
本町でライブ
「創作が無ければ生きていけない。いつかはオリジナル曲だけのコンサートを開きたい」と展望を語る金子さん。
あす10月31日(土)には、ライブカフェバー「CLAJA」(本町3の8の21)で仲間とともにジャズライブを開催する。当日はオリジナル曲を含む全14曲を披露するほか、自身のアート作品も店内に展示する。開場は午後2時30分、開演は午後3時。入場無料。
ライブに関する問い合わせは同店【電話】0466・24・3019。
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