鎌倉市が示した大船消防署玉縄出張所隣の市有地の売却方針が、地元の反発を受け保留となっている。この土地は所有者だった女性の「地域のために役立ててほしい」という遺志によって市に寄付されたもので、以前より玉縄地区の自治会などが「地域の拠点となる施設を」と要望していた。市は「土地の利用方法について改めて住民らと話し合いたい」としている。
大船消防署玉縄出張所隣の市有地(約250平方メートル)の売却は、2014年度当初予算案に盛り込まれ、2月議会に提出された。売却によって得た資金(約4100万円を想定)を、2016年度中に腰越地区に開設予定の「(仮称)腰越老人福祉センター」の建設費用(約2億6千万円)の一部に充てるというものだった。
しかしこの方針は、地域住民にとって「寝耳に水」だった。市有地にはもともと住居があり、高齢の姉妹が暮らしていた。しかし07年3月に姉が亡くなり、同年12月に発生した火災で妹の女性(当時80歳)も亡くなった。その女性が生前「地域の福祉に活かして欲しい」と遺言を残していたことから、土地と財産は09年に市に寄付された。
「玉縄のために利用を」
現在、約1万800世帯が加入している玉縄自治町内会連合会。地域では高齢化が進み、高齢者も使用できる公共施設を望む声が以前から強かった。同連合会では「女性の遺志を尊重し、寄付された土地に玉縄地域の拠点となる施設を設置してほしい」と市に要望。市からも「自治会館等の建設の可能性も視野に入れて検討する」との説明を受けていたという。
そのため突然の売却方針に地元住民は反発。3月には住民有志が松尾崇市長に対し売却の撤回と自治・防災・福祉の複合拠点の設置を求める要望書を提出したほか、4月には玉縄地区社会福祉協議会会長が松尾市長と面談し、同案撤回の要望を伝えた。
こうした地元の声を受け、市有地の売却は「保留」となっており、5月21日現在、議会に再提案する予定はないという。
玉縄地区在住の男性(72)は「売却してその資金をほかの地域の施設の建設に充てることは、玉縄地区で長く暮らしていた所有者の遺志を無視するものだ。あの土地は玉縄のために使うべき」と話す。
市福祉総務課は「所有者の『地域の福祉に活かして欲しい』との遺志があったので、老人福祉センターの建設費に充てることにも、理解が得られると考えていた。土地の利用については、改めて自治会や地区社協と話し合いたい」としている。
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