大船駅西口近くのマンション計画跡地について、鎌倉市は10月7日、所有者から寄付の申し出を受けたことを明らかにした。この土地では約10年前からマンション建設が進められていたが、市が出した開発許可が2度にわたって県の審査会で取り消された結果、中止となり、利用について市と所有者の交渉が続いていた。市は今後、子育てや福祉を目的とした複合施設の建設を進めるという。
JR大船駅西口から250m、岡本二丁目に地上9階地下3階建てのマンションを建設する計画が持ち上がったのは約10年前。大船観音の目の前であることや、予定地の一部が市の条例に基づく緑地保全推進地区だったため、当初から周辺住民が景観保護や緑地の保全を求める運動を展開した。
市は2005年3月に開発行為を許可したものの、同年12月、県開発審査会が「接道要件を満たさない」としてこれを取り消す処分を決定。その後、修正された開発計画を市が許可したものの、県開発審査会が再び取り消す裁決を出した。
建設業者は処分取り消しを求める裁判を起こしたものの、横浜地裁、東京高裁でいずれも請求が棄却され、マンション計画は完全にとん挫した。
そのため12年11月に土地を所有するセコムホームライフ(株)(東京都)が市に対し「公園等として利用するため土地を買い取り、または借り入れてほしい」と提案。両者の間で交渉が続けられてきたが、9月29日に同社から「地域に貢献できる形で役立ててほしい」として約2千平方メートルの土地を現状のまま市に寄付する申し出があり、受納が決定した。
今後について市は「市総合計画に定める健康・福祉・子育て・青少年などに関する行政課題を解決するための複合的施設検討地として活用していく」とする。
住民「市道復旧を」
計画が明らかになって以来、署名活動や事業者・鎌倉市との交渉などを続けてきた「大船観音前マンション問題に取り組む市民会議」の安藤久子代表は「当初から不透明な計画で、鎌倉における不当な開発の前例にしたくないという思いだった」と振り返る。
計画跡地では市道大船駅岡本線から丘陵の上にある住宅につながる階段状の市道が設けられていたが、市の開発許可が出された際の工事で取り壊され、現在も復旧されていない。安藤代表は「まずは市道を直してほしい。その上で今後を見守っていく」とする。市は市道について「近隣住民と十分な協議を行い、復旧の手法や時期を明らかにしたい」としている。
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