県保有古民家 北鎌倉「明月荘」で火災 母屋・茶室が全焼
県が市内山ノ内に保有する古民家「明月荘」で3月22日早朝、火災があり、母屋と茶室が全焼した。同施設では2年前に県と市民団体が維持管理、保全活用に関する協定を締結し、市民参加で建物の修繕や周辺の整備が行われてきた。関係者は「これからという時期に残念」と悔しさをにじませる。
3月22日午前3時33分、異常を知らせるアラームが鳴ったため、警察官が駆け付けたところ出火を確認。消火活動の結果5時55分に鎮火したものの、母屋246平方メートルと茶室16平方メートルが全焼した。24日現在、出火原因などは分かっていないという。
明月荘は、運輸・倉庫業で財を成した実業家、石橋又義が1946年に建築し、66年頃まで居住した。「戦前の住文化を取り入れた貴重な建築物」として評価されている。
同地にマンション建設計画が持ち上がったことから、71年に敷地を県開発公社が購入。県が78年に周辺の山林も含めて取得した。
79年以降は、鎌倉市が社会教育施設として市民に開放し、文化活動や会議室、イベント会場などとして利用されてきたが、建物の老朽化、シロアリ被害が深刻化したことから、2010年に一般利用を中止した。
市民団体が保全活動
「このままでは貴重な建築物が朽ちてしまう」。その後、同施設の利用法が決まらないなか、危機感を抱いたのが古民家の保存活用を図る市民団体「神奈川まちづかい塾」(小林紘子代表)。同会は11年、県に維持管理の協力を申し入れ、定期的に清掃を実施してきた。
こうした実績を受けて県は13年4月、同会との間で10年間にわたる建物の修繕と緑地の維持管理に関する協定を締結。以後、同会と地域住民による「北鎌倉明月荘の会」が、月3回の保全活動を実施してきた。また修繕費用に充てるための音楽会や落語会などのイベントも定期的に開催している。最近では地域住民のほか大学生、都内からも参加者があるなど、常に15〜20人で保全活動が行われていたという。
今回の知らせを受けて「明月荘の会」の川上靖治さんは「土台が曲がっていた玄関の修繕や壁の塗り替えを行っていて、まさにこれから本格的な修繕が始まるというところだった。参加者も増えていたので、無念でならない」と話した。
明月荘を保有する県自然環境保全課では「今後については市民団体の皆さんとも話し合い、検討していきたい」としている。
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