複数の地元企業が共同で運営する、全国的にも珍しい「社員食堂」が4月中旬、市内御成町にオープンする。鎌倉に本社を置くIT企業が中心となって進めている取り組みで、食事も市内の人気店が週替わりで提供する。関係者は「鎌倉で働く人が交流し、新たなコミュニティが生まれる場になれば」と話す。
「まちの社員食堂」は4月16日(月)、JR鎌倉駅西口から徒歩2分の場所(御成町11の12)にオープンを予定している。
鎌倉を拠点とする企業や団体など19社が「会員」となり、事業規模などに応じて会費を支払い運営に充てる。会員となった企業・団体の社員や職員は、月曜日から金曜日の朝(午前7時から9時・30食)は500円、昼(正午から午後2時・60食)は800円、夜(午後6時から9時・30食)は900円で食事をとることができる(会員以外は各プラス100円)。
食事も市内の人気店28店舗が週替わりで提供する「鎌倉ならでは」の社員食堂となる。
IT企業が中心に
店舗建物を建設するなど、取り組みの中心となっているのが鎌倉に本社を置き、スマートフォン向けコンテンツの制作などを手がけるIT企業「面白法人カヤック」だ。
同社は今年後半、市内に新社屋が完成し、現在は横浜のオフィスで働く約200人が鎌倉で働き始める。その際、社員が食事をとる場所が不足することが予想されることから、浮上したのが「まちの社員食堂」のアイデアだったという。
同社CEOの柳澤大輔さんは「鎌倉は観光地ということもあって手頃な価格で食事をとれる場所が少ない。自社の社員食堂を作ることも考えたが、1社だけでやるのではなく、鎌倉で働く人同士をつなげる場にしたかった」と取り組みの意図を明かす。
そのため「まちの社員食堂」では、入店の際に必ず名刺を首から下げるなどして互いに声をかけやすくするほか、イベントも開催し、交流を深める仕組みも検討しているという。
柳澤さんは「地域のつながりを深め、ここから新しい何かを生み出したい」と話している。
「新しい豊かさ鎌倉から発信したい」カヤック柳澤大輔さんに聞く
「まちの社員食堂」開設に、中心となって取り組むカヤックCEOの柳澤大輔さん。様々な立場の人が集い、地域の課題を「ジブンゴト」として解決を目指す「カマコン」をスタートさせたほか、「鳩サブレー」で知られる豊島屋と共同で保育園を開設するなど、ユニークな事業やまちづくりを鎌倉で続けてきた。その理由や思いについて聞いた。
――IT事業を中核とするカヤックが、鎌倉で事業を行い、また積極的にまちづくりにも関わってきた理由は。
「私たちは、色々な個性を持った地域を増やすことが社会そのものを幸せにしていくと考えていて、そのためには東京ではない場所を選ぼうと最初から考えていました。実際、鎌倉の魅力が発信にはメリットとなりましたし、人材の豊富さも大きな力となりました」
――事業のキーワードとして「鎌倉資本主義」を掲げています。その意味を教えて下さい。
「いま資本主義に限界が来ていると言われ、経済的な価値ばかり追い求めても、必ずしも幸せにはなれないということがわかってきました。代わりに人とのつながりだったり、自然との関わりだったりがこれからの豊さにとっては重要で、地域にはそれがつまっています。私たちはその新しい豊さを鎌倉で可視化したいという思いがありました。それには地元の企業、行政、民間団体と連携し、仲良くなることが大事だと思っています。社員食堂もそうですし、豊島屋さんと作った『まちの保育園』もそうした取り組みの一つです。これからも『まちの』シリーズとして、様々なプロジェクトの実現を目指していきます」
――「まちの」シリーズにはどのような構想がありますか。
「鎌倉で働く様々な人が住める『まちの社員寮』や、色々な会社が合同で採用を行ったり、大手企業で役員を務めた後、現在はリタイアしている方などをスカウトして、経営のアドバイスをもらったりする『まちの人事部』などを検討しています」
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