自身初となる画集「平成鎌倉の記憶」を出版した水彩画家 矢野 元晴さん 浄明寺在住 30歳
「鎌倉の魅力、世界に発信」
○…にじみやぼかしを生かした独特な筆遣いが特徴の「水彩印象画法」を用いて、故郷・鎌倉の風景を描き続けている。「平成を生きた証として美しい鎌倉を後世に残したい」と初めて自身の作品を一冊の本にまとめた。「画集を見た人が鎌倉に愛着を持ってもらえたら」と穏やかな表情で語る。
○…浄明寺生まれ。中学時代、昆虫やキノコなどの生態を調査する自然科学部の部長を務めた。ある日、理科の教諭からスケッチの仕方を指導してもらったことがきっかけで、調査結果を文化祭で発表することに。昆虫の脚にある細かな毛まで緻密に描かれたそのスケッチは、同級生が脱帽するほどだったという。「照れ臭かったけれど、何だか快感を覚えた」。大学卒業後は建築設計事務所に勤務したが、「商業芸術では自由なデザインを描くことができなかった」と挫折を経験。26歳で退社し、画家の道を志した。
○…さまざまなアート作品に触れる中で、水彩印象画法で作品を描く笠井一男氏に出会い、「土地の雰囲気や人の気配まで感じられる表現に衝撃を受けた」。夜は警備員のアルバイトで生計を立て、約2時間の仮眠を取りながら、昼は画塾で何千枚もの絵を描いて技術を習得した。「絶対成功できるという信念を貫いた」と振り返る。2年前に独立し、昨年8月には小町に鎌倉水彩画塾を開設。熱心な指導が話題を呼び、今では約170人の幅広い世代の塾生を抱える。
○…年間を通して和服姿がお決まりのスタイル。趣味は小学3年から続ける剣道で、最近は居合も習い始めた。「武道は礼儀や度胸が養われる。前世は侍かも」と笑う。最終的な目標は「鎌倉の魅力を世界に発信すること。そのためには、古き良き日本の素晴らしさを私自身が感じながら、体現していかなければ」