「玉縄青少年会館を2020年度中に廃止する」とした鎌倉市の方針に対し、利用者や地域住民の間に反発が広がっている。事前の説明がほとんどないまま市議会9月定例会に議案が提出されたためで、議会での審議を受けて松尾崇市長が議案の撤回を表明。結局、撤回が否決された後に議案そのものも否決される前代未聞の事態となった。
玉縄青少年会館は、3階建ての2階部分が「玉縄子ども会館」として、未就学児から中学生までが利用できるスペースとなっており、学童保育も設けられている。また3階には集会室や音楽室、和室があり、JR大船駅徒歩10分という立地の良さから、年間約3万5千人の団体・個人が利用している。
1970年に完成した同館を含め、市が保有する公共施設の6割以上は築30年以上が経過し、今後改修などに多くの費用がかかることが見込まれる。そのため市は2015年3月、「鎌倉市公共施設再編計画」を策定。1つの施設にさまざまな機能を持たせる「複合化」により、施設の統廃合を進める予定となっている。
同館については「順次施設内の機能を他施設へ移転し、20年度までに廃止する」としており、「近隣の玉縄小学校の敷地内に20年12月、学童保育などの機能を持つ『放課後かまくらっ子』を整備する準備が整った」ことを理由に、20年度中に廃止することを盛り込んだ条例案が、9月4日開会の市議会9月定例会に提出された。
「寝耳に水」住民憤慨
ただこうした市の方針が利用者らに直接伝えられたのは、議会が開会する直前の9月1日。毎月1日に開催されている抽選会に市職員が訪れ、説明があったという。「まさに寝耳に水だった」と話すのは8年前から同館で体操教室を主宰する加来保比古さん(75)。「事前に住民との話し合いの場は一切なく、単なる結論の押し付け。これからどうすればいいのかと怒りと不安が同時に込み上げた」と振り返る。
加来さんらは「玉縄青少年会館は子どもからお年寄りまでが交流できる場であり地域に必要不可欠」として、耐震補強を行ったうえで使用が継続できるように求める陳情を9月17日に市議会に提出。同日、松尾市長、久坂くにえ議長にも要望書を手渡した。
陳情を審議したこどもみらい常任委員会では、委員から市に対し、住民への方針の説明状況などに質問が集中。市は「パネル展示や広報紙、出前講座などを実施してきた」などと答弁したものの、「住民との意見交換がしっかり行われていない」「多世代交流の場を確保すべき」として、賛成多数で陳情は採択された。
その後、21日に同館で行われた地元説明会には地域住民ら約110人が出席。廃止に反対する意見が多く上がったという。
本会議で議案否決
こうした動きを踏まえ、松尾市長は27日の本会議で「十分な理解が得られておらず、閉館についてさらに検討をする必要がある」などとして議案の撤回を表明。撤回については反対20票、賛成3票の賛成少数で承認されず、議案そのものも反対14票、賛成5票(退席4票)で否決された。
市は「周知は公共施設再編計画全体のことであり、玉縄青少年会館閉鎖の説明は直接住民にしていなかった。(閉鎖については)まだ何も決まっていない」とするが、住民との話し合いの場を設けるかなどについて「現状では未定」とした。
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