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鎌倉 人物風土記

公開日:2019.11.22

今日から12月1日まで鎌倉芸術館で個展を開催する仏画師
寺田 しのぶさん
藤沢市在住 56歳

己と戦い筆に祈り込める

 ○…今日から12月1日まで、鎌倉芸術館で仏画展を開催する。「仏画師という仕事は、アーティストではなく職人の領域」と語り、信仰にも似た敬意と伝統を受け継ぐ誇り、周囲への感謝や平和への祈りなど、様々な想いを胸に筆を走らせる。その過程を「修行」に例えつつ「楽しくてしょうがない」と屈託のない笑顔を見せる。

 ○…「幼い頃はペンと紙さえあればいくらでも時を過ごせた」と振り返る。一方で、指導者だった父の影響からソフトテニスに打ち込み、実業団チームのメンバーとして全国大会にも出場した。転機は2001年、友人の誘いで行ったカルチャーセンターで仏画講座を見付けたこと。父は書道家としても活動しており、墨と筆が身近だったことに加え「短大で学んだ油絵を活かせるかも、と軽い気持ち」で始めたという。しかし気付けば会社を辞め、絵一筋に生きるまでに。「繰り返しの毎日にふと立ち止まった時、将来何をして生きていきたいかと考え、手に取ったのが筆でした」とほほ笑む。

 ○…仏画は技法、描き方などの形式に従うことが鉄則。自身は平安密教絵画を主とするため、一門口伝やそれすら絶えて久しい技術も多く、1000年以上遡った調査が必要な依頼もあり、一作に1年から3年を費やすことはざら。「仏様を描く時は、拝む方の思いに耐えられる強さとともに、それを受け止める優しさが必要」と語る。

 ○…創作に没頭しすぎて体調を崩し、夫にSOSを発信したことも少なくない。そんなときの「エネルギー補給」は愛猫との触れ合い、国宝館などへの訪問だ。一人立ちして初の個展。「仏画には銘や作家名はつけません。私の作品というより、仏画そのものを広く知ってほしいですね」

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