鎌倉警察署長を務める 植田 圭一さん 鎌倉市在住 54歳
背を見て学んだ警官の心
○…着任から2カ月を振り返り、「まちの皆様が好意的に協力してくださることが本当にありがたい」と、開口一番に感謝で目を細める。神奈川県内でも屈指の観光地である鎌倉市。「誰もが知る歴史と文化のまちで働けることは光栄」と笑顔を見せるが、渋滞による事故をはじめ、被害額が増加する特殊詐欺など課題も多い。「安全を守るパトロールを丁寧に、署が一丸となって取り組みたい」と背筋を伸ばす。
○…静岡県出身。父も警察官で、幼い頃から交番や駐在所に勤務する背を見て育った。落とし物や道案内など、何かに困った人が身近に頼れる存在に、自然と惹かれていった。大学卒業後、藤沢駅北口交番で警察官の第一歩を踏み出した。
○…全国を揺るがした東日本大震災では、機動隊として特別派遣に参加した。発災から1カ月後。まだがれきの散乱する被災地を捜索し、遺体を発見した。「亡くなった人を悼むとともに、安否の不安を抱え続ける遺族にとっては悲しくも心の区切りになる。あの時の自分は誰かのためになれたのか」。忘れることのできない自問は、今も続く。屈強な精神と体力が求められる機動隊だけでなく、相手に合わせて解きほぐすように指導する警察学校の教官も経験。これまでの歩みが柔と剛をあわせ持つ警吏を育てたが、心の底にはいつも「人を助ける父」の姿がある。
○…現在は鎌倉市内の官舎暮らし。夫人との間に2男に恵まれ、時折自宅に顔を出すが「みんな好き勝手にやってるよ」とちょっぴり寂し気。子どもの頃から自他ともに認める鉄道好き。ブルートレインに憧れて全国行脚で追いかけた経験も。パソコンに収蔵された数多の写真は密かな宝物。鎌倉のイチ押しは「やっぱり江ノ電ですね」