鎌倉 コラム
公開日:2026.04.10
鎌倉のとっておき 第194回 かまくら花めぐり紫陽花
雨の季節とともに、その色合いを深めていく紫陽花。元々日本発祥の花で、身近で見られる西洋紫陽花は、日本の額紫陽花が国外で品種改良され進化したものだという。
古(いにしえ)の紫陽花は、既に奈良期に編纂された『万葉集』にも登場している。
大伴家持は「言問(ことと)はぬ 木すら紫陽花諸弟(もろと)らが 練りのむらとに あざむかえけり」と、物言わぬ紫陽花のような私が、「私に恋している」というあなたの言葉(嘘)が嬉しく、騙されてしまったとの思いを詠んでいる。
また橘諸兄は「紫陽花の 八重咲くごとく 八つ代にを いませわが背子(せこ) 見つつ偲はむ」と、紫陽花が八重に咲くように、あなたの末永いお元気を、この花を見ながら祈っていますとの思いを詠んでいる。
そんな紫陽花の咲く名所といえば、姫紫陽花がライトブルーに染める明月院や、約2500株の花々が彩る長谷寺などが有名だが、見どころは他にも数多い。
まず浄妙寺。裏山の散策路で多様な山紫陽花や額紫陽花が咲き揃う頃、石窯ガーデンテラス前では、白やピンクのアナベルがボリューム感も豊かに咲き始める。
次に光則寺。200種を超える山紫陽花などが彩る中、海棠(かいどう)の下では、日蓮が修行した清住山原産の山紫陽花が静かに咲く。
そして「関東の富士見100選」の一つ稲村ヶ崎。江の島や富士山を背景に咲く紫陽花の姿は、一幅の絵のようである。
五月雨に包まれる古都鎌倉。雫を纏い輝く紫陽花も似合うまちである。
石塚 裕之
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