鎌倉 人物風土記
公開日:2025.08.15
鎌倉ワイナリーの代表取締役を務める
夏目 真吾さん
津西在住 56歳
突き進む 夢追い人
○…「20年はかかると思ったのに創業3年で一つめの夢が叶った」。喜びに声が弾む。世界三大ワインコンクールの一つDWWAで2銘柄が銅賞を獲得。元エンジニアならではの果汁分析での品質改善は目覚ましく「初年度の出来はお世辞にも良くなかった。それが短期間で世界に認めてもらえるほどになった」と、手応えは確信に変わる。
○…愛知県出身。醸造地を訪ねてヨーロッパを放浪するなどワインにのめり込んだが、会社員になってからコピー機などの商品開発に脇目も振らず没頭した。しかし、仕事の一環で参加した経営塾で「第二の人生をどう歩むか」の質問に胸を突かれた。「このままで良いのか」。疑問は心に広がったが、答えは自分の中にあった。「好きだったワインを作りたい」
○…元々は妻の望みだった鎌倉暮らしだが、海と山、温かな人柄に今や鎌倉愛は人一倍。高い湿度と塩害もある鎌倉はブドウには厳しい環境。「最初は『できるわけない』と言われ続けた」と苦笑する。農地を探すも門前払い。資金調達もままならない。「でも絶対鎌倉で作りたい」。歯を食いしばり続けるうちに「仕方ないなぁ」と周囲が手を差しのべてくれた。自宅の庭でわずか5本から始まった栽培は、関谷と七里ガ浜の農地で6千本が実を結ぶほどに。鎌倉産ブドウを使い鎌倉で作るワインでの受賞。第二の夢は目前だ。
○…仕事に追われる毎日に「3人の子どもたちも家族サービスをあきらめてる。父親としては全然ダメ」と肩をすぼめる。ワインの味はブドウで決まる。そしてブドウは古木になると収穫量は落ちるが実の品質が跳ね上がる。今の木々は、やがて希少な宝になる。「子どもたちの誰かが受け継いでくれたら」。それは密かな、第三の夢。
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