鎌倉 人物風土記
公開日:2025.10.24
25周年を迎える和太鼓グループ「鎌倉波乃鼓(なみのこ)」の代表を務める
岸本 純子さん
逗子市在住 65歳
和の鼓動に魅せられて
○…「20年ぶりの演奏会でドキドキだけれど、楽しみ」。目の前に迫った本番に、瞳は一層輝く。2001年に公立保育園の保育士10人で立ち上げた和太鼓グループ「鎌倉波乃鼓」。代表兼指導者としてメンバーをけん引してきた。「25年もたっていたなんて感じないくらい、あっという間」。充実感が、言葉ににじむ。
○…大阪で生まれ、名古屋から小学生の頃に逗子市へ。20代で鎌倉市の公立保育園の保育士になった当時は、園内で和太鼓を叩くことがあった。しかし、皆が自己流のやり方。「やるからにはちゃんとやりたい」と、和太鼓の心得があったことから指導にあたり、波乃鼓が産声をあげた。今は会社員や高校生なども加わり、22人が一つになって大きな響きを生む。日本全国で伝承される曲目を積極的に学び、市内のイベントで披露する勇壮な演技は観客を沸かす。
○…会場の空気を揺らし、リズムが体を動かす和太鼓の迫力は、言葉や文化などさまざまな壁を飛び越える。波乃鼓の誕生からほどなく始めた「鎌倉なみっ鼓」では、障がいを持つ子どもたちに和太鼓を教える。「皆で一緒に叩けたという経験が自己肯定感を高める」と手ごたえを語る。現在は日本語学校の教員を務め、演奏会にも教え子を招く。「いろいろな人に日本文化を伝えられたら」と目を細める。
○…夫との間に2子に恵まれた。2人とも独立し、「好きにやらせてもらえている」と笑顔。「太鼓は誰にでもできるけれど、真剣にやろうと思うと簡単には修得できない。でも、時間をかけた人ほど深みのある音色になる」。握るバチに込めるのは、家族への感謝と、仲間と演奏できる喜び。その鼓動は体だけでなく、心にも響く。
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