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大磯・二宮・中井 文化

公開日:2023.09.15

中井町泰翁寺
半世紀ぶりの葺き替え
50年前知る職人と対面も

  • (右から)秋澤さん、柿沼住職、城所さん。職人の助っ人が駆けつけて作業は2〜6人で行っている

  • 作業の様子

 中井町松本の曹洞宗泰翁寺(柿沼泰信住職)で、50年ぶりの茅葺き屋根の葺き替えが行われている。現場は境内にある仏具などを収納する「板蔵」と「薬師堂」で、開成町の茅葺職人・秋澤湖(ひろし)さん(42)が中心となり、各地から集まった職人らが作業に当たっている。

 同寺の板蔵は元禄時代、薬師堂は1820年頃に建てられたという。茅葺屋根は、雨や風にさらされて、1年間で1寸ずつ減っていくと言われており、同寺では隙間に新しい茅を補うメンテナンスを行いながら、50年ごとに葺き替えを実施している。

 50年前に葺き替え作業を行ったという城所達宏さん(94・中井町比奈窪)は、町内の師匠のもと18歳から茅葺職人の世界へ。「昔は中村地区に職人が20人くらいいた。高度成長期前までは茅葺き屋根がたくさんあった」と城所さん。茅葺き屋根の家が並ぶ当時の中井の景色を懐かしむ。

 城所さんが40〜50代頃が葺き替えの仕事は最盛期だったといい、その忙しさは現場を回り切れないほど。城所さんは「茅を集めるのが一番大変だった」と話し、時には御殿場から2トントラック4台分を運んだこともあるという。「当時は私が一番の若手。今はもう、中井町の職人経験者で生きているのは私一人だけだと思う。若い職人さんがいることがうれしい」と話す。

 葺き替えには、これまで使用していた屋根材を再利用する。日々作業する秋澤さんは「葺き替えは50年ぶりかもしれないけれど、使う茅は100年前のものかもしれない。当時の茅材の事情などが見て取れておもしろい」と話す。

 柿沼住職は「作業中の茅を揃える音なども新鮮。きれいにしてもらって、皆さんに喜んでもらえれば」と話していた。

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