小田原・箱根・湯河原・真鶴 人物風土記
公開日:2016.11.05
絵本『いただきます』を出版したイラストレーターの
島本 美知子さん
市内本町在住
手先に込める弾む意欲
○…建築家の兄が設計した自宅兼アトリエは自然光が差し込む、静かな空間。かつてパリに暮らした頃のように、いまでもラジオを聴きながら仕事をする。『いただきます』は、生きるうえで誰にも身近な「食べ物」を、子どもにも理解できるように描いた絵本だ。
〇…中学卒業まで小児ぜんそくと付き合い、学校は休みがち。「空想ばかりしていた」少女時代、おしゃれで社交的な父の影響を多分に受けて育った。季節ごとに変える掛け軸、床の間の花。家の中には常に、「新しいもの好きでいいもの好き」の父が集めた”一流品”がたくさんあった。父と交流のあった小田原出身の私小説作家・川崎長太郎を、幼心に「無口な人だった」と懐かしそうに思い出す。
〇…小学3年から習い始めた絵で一通りの画法を学び、母に「あなたの進む道はこれしかない」と勧められ、美術学校のセツ・モードセミナーへ進学。生徒の作品が年中サロンに展示され、賞で評価される学校生活は「実力を歴然と示される」点が刺激的、ここで審美眼を養った。広告制作会社を経て、『anan』の編集者に。覚束ないフランス語でパリ支局へ渡り、ファッション関連の20ページあまりを担当。企画、撮影の段取りからスタイリスト、記事の執筆まで何役もこなす。「主張しなければ生きていけない世界」で、アイデンティティーの黒髪を揺らし、黒い瞳をきらめかせ、奮闘した。
〇…日本とパリ、一時はニューヨークも股にかけ、有名雑誌や映画のイラストを手がけながら彫刻の勉強にも励んだ。「自分の絵で表現できることはまだまだあるはず」。目下、パリで描きためた和食のレシピ集を世に出すことをめざし、ものづくりへの情熱を静かに燃やし続ける。「なにごとにもとりあえず挑戦。失敗してもやってみなくちゃ」。穏やかながらも強い意志で、手にする色とりどりのパステルのように、自分色の人生を描く。
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