厚労省 "組子細工の技"評価 師岡町・田中さん「現代の名工」に
厚生労働省が卓越した技術をもつ職人を表彰する「現代の名工」制度。今年の受賞者が先月、全国から150人発表され、港北区から(有)田中建具店(師岡町)の田中利男さん(72)が選ばれた。建具などにあしらわれる透かし模様を、細い木材を組み合わせて作り上げる「組子細工(くみこざいく)」。その技術を生かした、田中さんの長年に渡る活動が評価された。
「組子細工」は、「組手」と呼ばれる木材の切れ込みを、寸分の狂いもなく組み上げ、欄間(らんま)や建具などにあしらう模様を作る技術。田中さんは、重要文化財である寺社仏閣の組子細工の修理や改築を数多く手がけてきた。最近では菊名神社の改築にも参加している。
神奈川県の推薦を受けた今回の受賞に、田中さんは「技能者ならば誰でもほしい賞。うれしい」と照れながら喜びを語っている。
「日曜日でも仕事ばかり」
田中建具店の3代目として、高校入学と同時に仕事を始めた田中さん。仕事のイロハを父親である先代から学んだ。「組子細工は特別な技術ではなく、昔の職人であれば誰もができた。今は需要が少なくなり、できる人も少数ですね」と嘆く。職人に一番大切なのは”こだわり”と話す。「この辺でいいやと妥協するのは駄目。突き詰めなければ。でも、そのためにうちの店は儲からないんですかね。口下手なので営業ができないんですよ。経営者としては失格かな」と苦笑い。妻の良江さんは「日曜日でも何かしら仕事をしているんですよ。本当に仕事一筋」と話す。現在、店は息子の成(みのる)さん(38)が4代目として修行中だ。「今年9月に初孫が生まれたんです」と微笑む田中さん。「ものが出来上がったときの喜びが次への原動力になります」と、5代目に技を伝える日を胸に職人道を歩み続けている。
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