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港北区 文化

公開日:2026.04.16

「歩く時間」が言葉を運ぶ 3000作品の頂点に

  • 賞状を手にする竹澤さん

    賞状を手にする竹澤さん

 視覚障害者と健常者が互いの立場を越えて理解を深めることを目的とした「第8回ロービジョン・ブラインド川柳コンクール」(主催・株式会社パリミキほか)の選考結果がこのほど発表された。応募総数3500句余りという激戦の中、高田東在住の竹澤聡さん(62)が詠んだ一句が、全部門を統合した頂点である「最優秀賞」に選出された。

敬意を込めたプロへの眼差し

 竹澤さんが今回、一般の部にあたるサポーター部門に応募し、最高賞に輝いた作品は「プロとして 無駄なく動く 盲導犬」。この句には、盲導犬を単なる賢い動物としてではなく、確かな技術を持った専門家として捉える竹澤さんの鋭い視点が込められている。選考委員の八木健氏は講評の中で「さまざまな誘惑に見向きもしない姿勢はいつ見ても感動する」と評した上で、使命と責任を背負い職務を遂行しようとする健気な姿と、その無駄のない動きから感じられる厳格な訓練の跡を高く評価した。竹澤さんが盲導犬に対して抱く、温かくも深い「敬意」が選考委員の心を打った形だ。

 この名句を生み出すきっかけとなったのは、地元である新吉田にある日本盲導犬協会の「神奈川訓練センター」の存在だった。竹澤さんはかつて、同センターの周辺で厳しい訓練に励む犬たちの姿をたびたび見かけていた。その際に刻まれた「プロフェッショナル」としての盲導犬の記憶が、今回、洗練されたリズムを伴って言葉となった。全国的にも珍しい訓練施設が身近にあるという、港北区ならではの風景が受賞を後押ししたと言える。

介護の傍ら歩きでつむぐ言葉

 竹澤さんの創作歴は40年近くに及び、これまでも複数の全国規模のコンクールで1等に輝いた経験を持つ。それでも「狙って取れるようなものではない。今回もたまたま運が良かった」と語る口調はどこまでも謙虚だ。創作のスタイルは、決して机に向かって捻り出すものではない。日々の散歩などの最中に、ふと言葉が降りてくる瞬間を大切にしている。「歩いている時が不思議と一番言葉が浮かぶ。考えて作ろうとすると、かえって良いものは作れない」と、直感を信じて言葉を拾い上げるのが竹澤流の真髄である。

 現在、竹澤さんは自宅で95歳の父親と90歳の母親の介護を一手に担う日々を過ごしている。父親の介助には常に注意が必要で、まとまった外出や就労がままならない厳しい状況にあるが、そうした生活の中で川柳は貴重な「心の息抜き」になっている。月に3〜4件、年間では40から50ものコンクールにメール等で応募し続けており、長年の継続が瑞々しい感性を保つ秘訣となっている。

 「言葉がパッと決まれば、小学生でも一等を取れるチャンスがあるのがこの世界」と竹澤さんは微笑む。自身の受賞を誇るよりも、誰にでも開かれた文芸の楽しさを説く姿が印象的だ。これからも無理をせず、介護の合間に見つける散歩道の風景から、暮らしを彩る確かな言葉をつむぎ続けていく。

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