学べる居場所に、およそ２時間もかけて来てくれる子がいます。その子は「生き物」がとにかく好きです。家でもたくさんの生き物を飼っているそうで、今日は家からカエルを連れてきました。その子と同じように生き物が好きな友達は大興奮で近寄っていったり、こわいものみたさでのぞいたりする子も。カエルのことを一生懸命に話してくれるその子の目はキラキラと輝いています。

　ある日、いちょうコミュニティハウスの和室にヤモリが顔を出しました。和室にいた二人の子はびっくりして和室から逃げてきて、大騒ぎです。そんな時、その子はヤモリを手の中でそっと優しく包み込むようにして外に行き、ヤモリが住みやすそうな居場所を探してあげます。そばにいた子が、ヤモリの頭をなでようとしたら、「ダメだよ！！人間だって、顔からいきなりなでられたら嫌でしょ」と。その子の生き物への愛情と優しさで胸がいっぱいになりました。

　最近、その子は居場所の室内には入らず、畑に行くようになりました。居場所で友達づくりに悩んでいましたが、畑で農作業をしたり、生き物を探したりしているうちに、いつの間にかいつも畑に行っている子と友達になっていました。

　久しぶりに私もその子と畑に行き、地域の方に教わりながら玉ねぎの苗を植えている時のこと。生き物の話を生き生きと話してくれる中で、ぽつりぽつりと、集団が苦手なことを語ってくれました。「もじゃくん、人生は過酷なんだよ」その子の口から出た言葉に私は胸がつまりました。私はその子に何を伝えることができるんだろうか。言葉ではなくて、その子と一緒に農作業をする中で、それを乗り越えるものを感じたいし伝えたいと思いました。最後に、サツマイモを掘りました。そんな時でも、その子の興味はサツマイモよりも土から出てくる生き物でした。私に大切なゲジゲジと、自分で掘ったサツマイモをそっと渡してプレゼントしてくれたその子に感謝です。