第218回 男のおしゃれ学 「子どもの頃の思い出は消えない」パリ本部FIMT国際デザイナー中嶌 敏男
小学校3年生の暮れに、母親に連れられて年末大売り出しに行った。魚屋で太い酢蛸1本を買ったときにもらったのが、2枚の福引抽選券だった。
年が明け、1月3日の抽選日。店頭に貼ってある抽選番号を見ると、なんと特賞の「トランジスタラジオ」が的中していたのである。
その瞬間の、手足が震えるほどの感動は今でも忘れられない。当時トランジスタラジオはたいへん高価で、村の人で持っている人はいなかった。家に持って帰り、箱を開けて何度も見てはうれしくなり、添い寝をして、なかなか寝付けなかった。
次の日、喜びいさんで学校から帰ってくると、大切なラジオがない。母親にわけを聞くと、26歳の義理の叔父に「どうしても欲しい」とねだられ、1000円で売ってしまったという。ラジオは、その日のおかず代になってしまったのだ。
裏山へ行って大声で泣いたら、その声を聴いたおふくろも家で泣いていたという。若き日の思い出が今でも目に浮かぶ。
|
<PR>
|
|
|
|
|
|
|
<PR>
4月18日