講演会「時代を拓いた女たち」を開く女性史研究家 江刺 昭子さん 中区在住 69歳
「個を大切に生きて」
○…自身も20年以上暮らす横浜、そこで過去に生きた女性たち。「夫の陰というよりは自分も前に出て活躍した点で非常に特徴的ですね」。2月17日、横浜シティガイド協会のまち歩きツアーとコラボレーションした講演会「時代を拓いた女たち」では同名の著書の中から、戦前の港町横浜で夫の商売を支えながら、社会運動や慈善活動の一線で活躍した女性たちを取り上げ、その生涯を語る。
○…広島県出身。高校卒業後に上京し、早大教育学部へ入学。3年次には同郷の作家・大田洋子氏が下宿人を探していると聞き1年半を同じ屋根の下で暮らした。就職活動の時、「男性社会の中での生きづらさを実感したのはこの頃でしょうね」。希望していた新聞社や出版社のほとんどが女性には受験資格すらなく「女性も可」とある数少ない選択肢の中、文化出版局に入社。その後「ファッション誌よりも社会問題をやりたかった」と1971年にフリーランスに。忘れられた作家となっていた大田洋子氏の評伝では第12回田村俊子賞を受賞した。
○…1982年の県立かながわ女性センターの開所後、県の女性史編纂を依頼されたのがきっかけで、以降は”地域の女性史”に傾倒していく。一般の主婦らと立ち上げた「史の会」などで、歴史に埋もれてきた多くの女性たちの活躍に光を当てた。「女性の歴史は資料すら探すのが困難。調べていくと、学生時代に勉強した近代史とは違うのがわかる」。穏やかな口調の中にも、男性の視点で残されてきた歴史の見直しの必要性を説く姿勢が印象的だ。
○…自宅全体が書庫のように所狭しと本が積みあがる。「趣味と言えば料理くらい。息子には仕事ばかりな人だと言われます」と笑うが「ずっと好きなことを書いてきたし幸せですよ」と頷く。現代を生きる女性たちへ。「個を大切に生きてほしい」。過去を生きた女性たちのメッセージを代弁しているのかもしれない。
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