市「よりよい支援を期待」
淵野辺にある麻布大学の食堂が10月から就労継続支援B型事業所(就労B型)として運営されている。相模原市によるとこれまで大学内に事業所を構えたケースはないという。代表者は「障害者にも飲食業で働きたい人もいる。そのような人の希望を叶えられる場所になれば」と期待する。
地元業者が運営
就労B型とは、障害のある人が雇用契約を結ばず軽作業などの就労訓練を行うことが可能な事業所のこと。今回委託を受けたのは、JR淵野辺駅北口で飲食店、福祉事業所を展開する「さんぽみち」。代表の石井直紀さんは和食店「散歩道」をきりもりする傍ら、6年前から高齢者、障害者の訪問介護、障害者のグループホームなどを運営している。
石井さんはこれまで店舗営業だけでなく、企業や高齢者施設に対し弁当の配達も行ってきた。そのような中、知人を通じて大学に隣接する附属高等学校から学食運営の依頼が届き、昨年秋から弁当を提供する形で業務を請け負うようになった。
一方、麻布大学には当時、食堂が2カ所にあった。ただ、コロナ下で学生の利用が一気に減り、一つの食堂は業者が撤退。この春から自習室として運用されていた。同じ敷地内に出入りをしていた石井さんは「食堂が使われていない」ことを知ると「就労事業所にできないか」と考えた。
これまでない
石井さんはさまざまな障害者と接する中で、「働きたい所で働かせてあげたい。ただ、飲食業は難しい」ことがわかっていた。提供に一定のスピードが求められる飲食業は障害者にとって「ハードルが高い」とされてきた。
閉鎖中の食堂は、できてまだ10年ほどで厨房設備がしっかり整っており、作業スペースも十分に確保されていた。また「駅から徒歩3分」と利用者にとってアクセス面でこの上ない立地にある。石井さんは高校を通じて大学へ打診した。大学側は「大学は研究や教育だけの施設ではない。地域との連携は必要なこと」と地域社会への貢献として石井さんの提案を受け入れ今年2月、閉じていた食堂を就労B型として運営を開始することを決めた。
「これまで本市にはないケースだったので、他自治体の類似ケースを調査するとともに、事業者や麻布大学に何度も話を伺った。就労継続支援B型事業所としての指定基準を満たしているか、大学内という環境が利用者への支援や事業所運営の面でデメリットにならないかなど、課内で検討を重ねた」。対応にあたった相模原市健康福祉局地域包括ケア推進部福祉基盤課担当者は今回の経緯についてそう説明する。運営が始まったことについては「大学内の食堂という他の事業所にはない特色が、利用者の皆さんへのよりよい支援効果につながれば」と話した。
利用者見学に
食堂は現在、同社スタッフがキッチン、フロアを担当しており、利用者に対して見学を受け付けている状況。石井さんらスタッフは日々、障害者が作業しやすいような調理や配膳方法を試行錯誤している。「カフェやレストランで働きたいと思っている障害者はいる。障害者も自分が働きたい所で働けるようになれば」と石井さんはこの事業を通じて、多様性がある社会の発展にも期待する。
大学は「食堂で障害者と接することで社会経験を積むことができる」と学生にとっての利点をあげた。
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