さがみはら中央区 文化
公開日:2026.05.28
淵野辺の工場 「カセット人気」支える 国内有数の設備を維持
昨今、「昭和レトロ」ブームなどを背景にカセットテープの人気が再燃している。市内の中古レコード店でも売り上げが伸び、音楽活動を行う若者が作品をカセットで発売する動きも見られる。ブームが加速する中、中央区内で現在もカセットテープの録音からパッケージングまでを一貫して手掛ける企業に話を聞いた。
年40万本 「生き残った」老舗
淵野辺に本社を構えるアイディーマグネテック株式会社は、1970年の創業当初よりカセットテープの生産を続けてきた。従業員は23人と少人数ながら、現在でも年間40万本近い製品を製造している。
2025年には松任谷由実さんのカセット制作を担い、同氏の公式SNSで工場訪問の動画が公開されたことでも話題となった。
「ここ数年で、アーティストがリリースするカセットテープの本数は増えた」と話すのは、同社の林信爾代表取締役。コロナ禍でそれまで主要ジャンルだった演歌作品の依頼がゼロになった一方、近年はメジャーアーティストのコアなファンを対象とした作品や、インディーズアーティストからの依頼が増加した。インディーズ作品だけでも月に80タイトルほどを手掛けているという。
1本のカセットテープが完成するまでには複数の工程がある。音源データを記録媒体に焼き込み、専用の機械を用いて80倍速でダビング。その後、別の機械でカセット本体にテープを巻き込んでいく。現在は1日に約2000〜2500本を製造。カセットテープ全盛期には、現在の3倍の設備を構え、月に20万本以上を製造していたという。
かつては全国に多数の工場が存在したが、需要低下や設備維持費の高さから減少。同社では、過去に機械メンテナンスを専門としていた林代表が自社設備の保守も担うことで、長年システムを維持してきた。
林代表は「カセット製造は、新しい機械がもう生産されていないニッチな分野。気付いたら生き残っていた」と語る。現在、国内で新譜として流通するカセットテープの大半を同社が録音しているという。
市内でも若者増
矢部の中古レコードショップ「7inch早川」でも、ここ数年でカセットテープの売上が増加している。店主の早川信彦さんは「当時を知る世代より、若い人が買いに来ている印象」と話す。最近も中学生が購入していったといい、「物珍しさもあるし、『レトロでかっこいい』という魅力もあるのでは」と分析する。
過去に自身のバンドでカセットテープをリリースしたという市内の20代男性は「再生環境がなくてもカセットで欲しいというマニアも存在する。あえて不便にすることで、音楽を聴くこと自体が体験につながる。また、アナログレコードと比べるとリリースの敷居も低い」と、その魅力を語った。
配信サービスの普及によって、いつでもどこでも手軽に音楽を再生できる時代。手間や質感を楽しむというカセットテープならではの「体験」が、新たな層を引き付けている。
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