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「サッカー愛」胸に第2章へ 川口選手最終戦へ

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掲載号:2018年11月29日号

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通算500試合出場を達成しファンと喜びを分かち合う川口
通算500試合出場を達成しファンと喜びを分かち合う川口

 「炎の守護神」として愛された男の物語に、一つの幕が下りようとしている―。4度のW杯を経験し、GKとして歴代最多の日本代表116キャップを誇る日本サッカー界のレジェンド・川口能活は今シーズン限りでの現役引退を決意した。横浜マリノス(現・横浜F・マリノス)でキャリアをスタートし、その後、海外リーグなどで活躍した川口の現役最後の地となったのは相模原。常に日本サッカー界を背負ってきたレジェンドは、ここ相模原で何を感じ、何を残したのか、最後の地で歩んだ道のりを追った。

新たなチャレンジ

 川口がSCに入団したのは2016年。所属していたFC岐阜と契約満了になったところ、声を掛けたのが高校の先輩・望月重良会長だった。「相模原のために力になってほしい。最後にもう一花咲かせよう」。元日本代表・高原直泰が退団し、若手・中堅中心のチームにとって、川口は経験豊富なベテラン選手、クラブの「顔」としての価値を持ち、チームを盛り上げるにはこの上ない存在だった。川口も40歳を迎えてなお、自らを必要としてくれる先輩の気持ちに心が震え、入団を決意した。

 欧州やJ1、J2を経験したベテランにとって、創設間もないJ3は未開の地。SC加入は「新しい環境の中でのチャレンジ」と位置付け、年齢的に引退が頭をよぎる中で現役続行を選択した。入団会見では「相模原に骨を埋める覚悟」と宣言。相模原の地でサッカー選手としての集大成を迎える決意を固めた。

揺らぐプライド

 世界を舞台に活躍してきたレジェンドであっても、SCでの3年間は決して順風満帆とは言えなかった。1年目は開幕直前に足首にケガを負い出遅れた。2年目には若手GK・藤吉皆二朗台頭で出場機会に恵まれず、今年も新加入の大卒GK・田中雄大選手に長く守護神の座を明け渡し、出場は5試合にとどまる。

 この間、川口は葛藤していた。J3という決して注目度の高くない中でプレーしている自分自身に、今まで積み上げてきた実績や経験に裏付けされるプライドが揺らいでいた。「一人の時には自分自身に対して疑心暗鬼になることもありましたね」。普段多くを語らないベテランは、かつての「残像」と現在の自分の姿との狭間で人知れず苦しんでいた。

 川口にとっては苦しさを伴う3年間だった。ただ、同時に「プレーできる喜び」を再認識できた時間でもあった。J1、J2と比較しJ3のSCは決して恵まれた環境ではない。専用練習場はなく、アウェー試合の多くがバス移動。クラブでは限られたスタッフが必死に選手をサポートし、試合を支えたのは気持ち一つで集まったボランティアスタッフと力強いサポーターだった。川口は「ボランティアの方は時間を割き、SCのために活動してくれている。簡単にできることではないし、当たり前だと思っていたことの大切さ、難しい環境でもまたプレーできる喜びを実感しました」。25年間キャリアを積み重ねていく中で、原点回帰とも言える素直な言葉だった。

 そして、「仲間」の存在に支えられた3年間でもあった。「一人になると余計な事を考えてしまうけど、グラウンドに行けば一緒に頑張っている仲間に会える。仲間がいたからサッカーを楽しむことに集中できました」。経歴や実績も異なる選手同士でも、日々勝利をめざし共に戦う仲間の存在は、川口の背中を誰よりも押してくれた。

受け継がれるもの

 川口はこの1、2年、引退と現役続行の間で揺れていた。引退記者会見では「完全燃焼したかと言えば、まだ余力は残している」と、川口らしい熱っぽい言葉で自らを分析した。では、なぜこのタイミングだったのか。川口にユニフォームを脱ぐ決断をさせたのは日本代表の躍進だった。

 ベスト16進出を果たしたロシアW杯。日本代表は世界の強豪と渡り合い、当時世界ランク3位のベルギーを土俵際まで追い詰めた。その姿に、日本も世界で通用する可能性を感じ、世界基準へ日本を導くため指導者として自らが果たすべき役割を認識した。選手として相模原に骨を埋め、川口能活・第2章へと歩みを進めることとなった。

 12月2日が迫る。川口は「特に意識せずに準備をして、出場の機会があればチームの勝利のためにプレーしたい」と語る。試合後のセレモニーではどんな言葉を紡ぐか。クラブによると、現役最終試合はSC史上初、1万人を超える観客がギオンスに詰め掛ける予定だ。日本サッカー界を牽引してきた男の最後の雄姿を目に焼き付けたい。

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