2月2日に宮ヶ瀬で開かれる和菓子づくり教室で講師を務める 土門巨幸(なおゆき)さん 愛川町角田在住 32歳
いつも親父と競い合い
○…「和菓子の可能性や幅を知ってもらうきっかけになればうれしい」とにこやか。(公財)宮ヶ瀬ダム周辺振興財団が、宮ヶ瀬のバレンタインイルミネーションに合わせて企画した地域との交流企画。今回は和菓子づくりで生チョコを使った大福、梅の花を象った上生菓子をレクチャーする。和菓子屋というと、饅頭とか羊羹などばかりをイメージする人が多いと感じているが、そんなイメージを打破したい。イベント協力などにも積極的なのはそのためでもある。
〇…「親父の土台の上でやらせてもらっているのは分かっている」。昭和42年創業の菓匠土門の2代目。父親で社長の千次さんは若い頃からその腕を買われ、全国各地の店を回った。自身は専門学校卒業後、千葉県の店で4年間修行し実家に戻ったが、当初は常連客から注文を受けるのにも「お父さんでなければだめ」と言われることも。経験ではとてもかなわないが「うまいものを作りたい」という信念は同じ。見た目、味、製法と自分なりの新しいアプローチを続けている。
○…新しいものといっても、技術の裏付けがなければ自己満足。販売用だけではなく、魅せる和菓子の技術も磨いているのはそのためだ。売るわけでも、食べるわけでもない工芸菓子は職人のプライドで作られる芸術品。花鳥風月などを立体的に表現し完成品は絵画のよう。これまで店内のメインケースは父の指定席だったが今年初めて「まだまだだけどな」の言葉とともに展示を許された。
○…親父が、親父の、親父は…。口を開けばそればかり。師匠として、ライバルとして意識は並でない。「偶然ですよ」と笑うが創業は父31歳2月。そして支店を出したのは自身が31歳の2月だ。茶髪にヒゲは「和菓子屋っぽい」と言われるのが嫌いな自身のご愛嬌。春と秋の緑の違いを真剣に語る様子には、季節感を大事にする和菓子職人らしさが垣間見えた。