愛川町教育委員長に就任した 井上 正博さん 愛川町半原在住 64歳
懐深い教育者
○…町の教育の基本方針や施策を審査し意思決定する「教育行政の責任者」である教育委員会。直接学校に出てくることは少ないため活動が見えにくい部分もある。「委員会の形骸化を指摘される例もあるが、愛川町は5人の委員全員が責任の重さを噛みしめ、真剣に教育を考えています」。情熱は言葉と眼差しに宿る。
○…半原で生まれ、半原小学校、愛川中学校と進学し、厚木高校から群馬大学に入学。卒業後は伊勢原市の小学校で教員を務め、高峰小学校など3校で校長も務めた。教育畑一筋。その生き方を決めたのは中学3年の時だった。「当時の担任が今も自分の理想の先生像。生徒にしっかり向き合う人でした」。憧れた姿を自分に重ねあわせ、ひたむきに走り続けた。「教育で大切な事は、まず子どもありきということ。『その子にとって一番良いことは何か』を常に忘れないこと」。40年以上教育の現場に携わってきた言葉に、迷いはない。
○…若くして目標を見据え、夢に向かって一直線かと思いきや、大学時代はちょっと遠回りも。「学生という自由な立場は人生でとっても貴重な時。4年間じゃもったいない」と、卒業に必要な単位を修得しておきながら自ら留年を決意、興味ある講義に出席し、ありとあらゆるアルバイトに身を投じて社会勉強に明け暮れた。「濃密な1年でした。どんなことでも、知ることは人生の肥やし、生きる力になってくれる」。日焼けした肌と気風の良い口調。行動と経験を重ねた人生の年輪はみっしりと厚い。
○…二人の息子は独立し今は夫婦水入らず。学生時代からバイクが趣味で「昔は300Kmくらい平気で走ったけれど今はちょい乗り」と苦笑い。時折顔を見せる孫を乗せて近所を走る。クラシック鑑賞や読書など趣味は多彩だが、今のお気に入りは家庭農園。「まだまだ素人」と謙遜する。「無心で土をいじるのが楽しいって知ったよ」。満面の笑みが充実の日々を物語る。