北極点無補給単独徒歩到達を目指す北極冒険家 荻田 泰永さん 愛川町出身 39歳
挑戦は終わらない
○…これまでの17年間で北極圏9000Km以上を踏破。2012年から、北極冒険の最高難度である北極点無補給単独徒歩到達を目指している。成功すれば日本人では初、世界でも3人目の偉業となる。過去に2度挑戦したが、乱氷帯やブリザードなど過酷な環境に道半ばで断念。それでも情熱は衰えず、3度目の挑戦に向け準備を進めている。
○…愛川町田代出身。田代小、愛川中と地元で育った。愛川高校卒業後は大学に進学したが、人生の目標が定まらず若いエネルギーを持て余す日々。転機は何気なく見たテレビ番組だった。冒険家の大場満郎氏が、北極や南極での体験を語っていた。命の危険を乗り越え進む姿に、驚きつつも惹かれるものがあった。「大学生を連れて北極を歩こうと思っている」という大場氏の言葉にいてもたってもいられず手紙を書いた。どこに出していいか分からず放送局宛てに出した手紙に大場氏から返事が来た。「嬉しかった。何か始まる期待感があった」と振り返る。
○…北極圏では、装備を乗せた約100kgのソリを自分の力だけで引き、ただひたすら歩く。寒さ、クレバス、シロクマやオオカミなどの野生動物…。危険は常に隣り合わせ。それでも、できなかったことができるようになった充実感、誰も手の届かない所に手を伸ばす高揚感、過酷な環境で得られる生の実感は、冒険家を駆り立てる。「北極はあくまで手段。目標にたどり着くまでのプロセスをどう生きるかが大切」と語る。
○…現在は北海道に拠点を置き、夫人と息子の3人家族。「子どもが大きくなったら、冒険とはいかないまでも連れて歩きたいね」と柔和な表情に。冒険後や年始など、今も年に数回愛川を訪れる。かつて遊び場だった山や川など豊かな自然に囲まれた故郷。「自然という素材だけに甘えてはだめ。どう活かすか『加工の上手さ』が大切。ふるさとだからこそ、面白い町になってほしいね」とほほ笑む。