中津川仙台下クラブの代表を務める 沼田 彰さん 愛川町角田在住 69歳
郷里の自然 守り続ける
○…「この木陰は川からの風が通り抜けて、夏は本当に気持ちいいんです」。川原を歩きながら、柔和にほほ笑む。中津川仙台下川原の整備を通して、水源環境の保全・再生に取り組む「中津川仙台下クラブ」。5ha以上の広大な土地は、かつて木や草が生い茂り、人の侵入を拒む密林のようだった。現在は平坦な広場に小さな清流が走り、憩いの場として多くの人が訪れる。
○…生まれは愛川町角田。「子どもの頃は毎日中津川で遊んだ」という活発な少年だった。父から譲り受けた土地で野菜などを作りながら会社員として長く勤務してきたが、手入れが届かず、荒れ放題の川原に心を痛めてきた。思い出の場所を「何とかしたい」。6年前に有志7人が集い同クラブを立ち上げた。当初は資金もなく、刈り払い機などを持ち寄り、手弁当で整備を進めた。2012年から神奈川県の補助が始まり、重機などを導入できるようになったことで作業が一気に加速。メンバーも約50人に広がった。
○…川原の整備から始まったクラブの活動は、今では自然と触れ合う活動に広がってきている。「ここの休耕地では、春は菜の花、夏はヒマワリ、秋にコスモスが綺麗に咲きます。隣の休耕田では、米作りにも取り組んでいるんです」と瞳を輝かせる。かけがえのない自然という財産を活かすため、仙台下川原を活用した「水辺の学校」などを夢に描く。「やっぱり中津川は愛川の自然のシンボル。活用しない手はない。単純に『水辺は危険』と子どもたちを遠ざけるのではなく、危険と楽しさ両方をしっかり教えていかないといけない」と、熱を込める。
○…釣り、ゴルフ、スキー、山登りなど、趣味もやっぱり自然との触れ合い。3人の娘に恵まれ孫は5人。「お正月は賑やかですよ」と相好を崩す。「孫たちにも、もっと自然の中で遊ばせたいけれど、今の子どもたちは何かと忙しいからなぁ」と少し寂しそうに笑う。