横須賀市は、9月2日に開かれた市議会予算決算常任委員会(都市整備分科会)で、横須賀新港と新門司港(福岡県北九州市)を結ぶ「東京九州フェリー」の就航について経過を報告した。新港ふ頭で荷役を行っている事業者でつくる横須賀港運協会との間に横たわっていた課題は、国土交通省が立会人となり、5回に渡る協議を重ね、7月に基本合意に達した。今後は港湾施設の共同利用を推進しながら、両者が一体となってポートセールスにも取り組む。
基本合意に盛り込まれたのは、港湾施設や運用の改良、新たなふ頭(第2突堤)の整備に向けた検討、改良工事が行われている一定期間の港湾施設使用料減免、夜間のフェリー就航に伴い、荷役の船を沖に待機させる費用の補助など。市と協会が意見のすり合わせを行い、着地点を見い出した。
▼港湾施設の改良
基本合意に基づく取り組みとして、市は9月定例議会でふ頭の利用に関する2件の補正予算を計上している。1つは「横須賀港利用円滑化補助金」。新港ふ頭を使用するマグロ船は1回の荷揚げに数日かかることがあり、夜間にフェリーが着岸する際、一時的な離岸(沖出し)が必要となる。この費用を負担するもので、一時離岸は42万円、誘導が必要な3号桟橋の使用時に46万円を補助する。金額は1回あたりの限度額で、来年3月まで1674万円と算定している。
もう1つがこれに関連した久里浜港での「SOLAS(ソーラス)エリア」の整備。マグロ船など外航船が利用する岸壁では、船舶と港湾施設に対して保安措置が義務づけられている。ソーラスとは、出入管理や貨物の取扱管理、港湾施設内外の監視等を行う施設で、久里浜港の1号岸壁の一部をこれに対応できるよう整備する。今回の補正予算では現況の測量やソーラスフェンスの設計などに2670万5千円を計上。来年度は管理施設やフェンスの設置工事を行い、23年度の利用開始となる見込み。
▼環境調査
フェリー就航に伴って実施した環境調査の結果も伝えられた。懸念されていたフェリーの待機車両による交通渋滞は、現時点で発生していないことを確認。ただコロナ禍で貨物ニーズが本調子でないことから平時に戻った状況で再調査を行うとした。騒音と振動は、神奈川県が定める基準値を下回っており、大気状況も観測局のモニタリングデータを検証した結果、汚染状況はなかった。
フェリー就航後に近隣住民から通報のあったふ頭内を照らす照明による「光害」は、照明灯の角度調整を行い、眩しさを防止する器具を取り付けたことで解消していると説明。個別の意見にも迅速に対応する姿勢を示した。
▼市民周知
7月1日に就航したフェリーの状況は、旅客が順調な滑り出しを見せている一方、貨物トラックなどの乗船は採算ラインの7割に届いていないという。フェリー事業者は半年をめどに回復を目指しており、市もPR面などで後押しする。市内のホテルなどとの連携も進め、物流と人の動きを活発化させる考えだ。北九州との経済交流なども検討する。
8月に予定していた「市民クルーズ」は、定員200人に対して5700人の応募があり、関心の高さを示した。新型コロナの影響で中止となったが、市は状況を見極めて再度実施する意向。月曜日の日中の停泊時間を利用して、船内見学を行うことなども計画している。
|
<PR>
横須賀版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|
|
|