横須賀・三浦 コラム
公開日:2023.05.05
"海の隼"をあるく
〜按針が見たニッポン〜03 臼杵編(3)作・藤野浩章
「我々は海賊などではない。ただ漂着した交易船だ」(第一章)
◇
黒島に漂着したリーフデ号は、さっそく暴徒と闘うことになったが、本書ではその"頭脳戦"が面白い。指揮したのは、もちろんアダムス。彼の卓越したリーダーシップと先を見据える知能は「航海士」だからこそ持ち合わせていたものではないか、という説で大島は全編を貫いている。しかもイギリス人ながらオランダ船に乗るなど、各地の言語や情勢を理解する国際人だったことも、その後の彼の人生を大きく左右することになる。
アダムスとその船リーフデ号は、黒島から直線距離にして7キロほどを曳航(えいこう)されて、臼杵(うすき)の町までやって来た。今も石垣が残る臼杵城は、かつては周囲を海に囲まれた島だったというから驚きだ。城跡から見下ろす臼杵の町は今では埋め立てられていて、往時の姿を想像できない。最初の城主はキリシタン大名としても知られた大友宗麟(そうりん)。そのため、城の中や城下にもキリスト教関連の施設があったようだ。
浜の外れの寺に収容されたアダムスたちは、遠くに見えるこの城を見て、何を思っていたのだろう。しかも、生き残っていた乗組員は1割ほど。いくら歴戦の兵(つわもの)といえど、遠い異国でさぞかし心細かったろう。
しかし、次の戦いはさっそくやって来た。宣教師だ。旧教と新教による対立は日本人には容易に理解しがたいが、本書ではアダムスと旧教の宣教師であるコルデスとの激しい口論でその一端を表現している。この地で、生きるか死ぬか、の頭脳戦が始まったのだ。
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