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横須賀・三浦 コラム

公開日:2023.07.07

"海の隼"をあるく
〜按針が見たニッポン〜11 浦賀編(2)作・藤野浩章

  • 浦賀港の眺め

 日本に漂着して約3カ月。浦賀に着岸したリーフデ号だったが、乗組員にしてみれば、臼杵(うすき)から大坂を経てたどり着いたこの地の景色を、絶望的な気持ちで見ていたのではないだろうか。

 2年に渡る厳しい航海で命からがら日本に着いたと思ったら、今度は敵である新教の息がかかった地に上陸し、事実上の傭兵(ようへい)として内戦に巻き込まれる──。いくら歴戦の船乗りと言えども、ナーバスにならざるを得ないだろう。事実、久しぶりに再会した船長のカッケルナックは終始マイナスな事を言うキャラクターになっている。

 しかしアダムスだけは至ってポジティブだ。激しく動く"風"を読み、家康に加勢する道を選ぶ。もちろんこれはあくまでも故郷への帰国を実現するという目標があったからだろう。本来なら船を修理した時点で帰国できたはずだが、そこで強引に帰国を企てれば命が危ない。まな板の上の鯉という状況ではあったとしても、何としても帰国するという強い意志があったからこそ、彼は前進できたのだろう。

 家康陣営に入ったアダムスに、休んでいる暇はなかった。積み荷の大砲を江戸へ運ぶ大役があったのだ。浦賀で出迎えた徳川水軍の船手頭(ふなてがしら)・向井(むかい)忠勝(ただかつ)を交えた協議で、海からではなく陸路で江戸へ向かうことになる。大砲を届けた時点で「お払い箱」になる可能性もある中で、アダムスはどんな気持ちで船を離れたのだろうか。

 こうして一行は、総勢二百人という厳重な行列を組織して、歩いて江戸を目指した。陸に上がった「海の隼(はやぶさ)」の本当の勝負が始まったのだ。

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