横須賀・三浦 コラム
公開日:2026.04.17
三郎助を追う ~もうひとりのラストサムライ~ 第40回 文・写真 藤野浩章
「勝ち敗けよりあのご仁、なにやら変ったものをお持ちのようで、その方が興味深い」
◇
幼い頃から将来の与力候補として叩き上げてきた三郎助とは対照的な幕臣の登場は、まさに新しい時代が到来していることを感じさせた。三郎助のこのセリフの相手はもちろん、勝麟太郎だ。
外国勢力が日本に触手を伸ばしてきたこの時期、幕府に海防や外交の専門家がほとんどいないという異常事態だった。そのため、江川英龍(ひでたつ)など数少ない幕臣に仕事が集中するという状況だった。逆に言えば、軍事や外国の事を学んでいれば、昇進の機会は多い。これらの学問を学ぶ幕臣が多かったのはこういう事情があるのだろう。こうして川路聖謨(としあきら)、大久保忠寛(ただひろ)、勝、そしてこの後に小栗上野介やその盟友である栗本瀬兵衛などが次々と登用されていく。もちろん三郎助もその一人だ。
しかし重要なのは"本当に実力があるか"だ。彼ら新世代官僚は、日本存亡の危機を迎える中で、幕府史上かつてない実力主義のレースに首を突っ込んでいたと言えるのではないだろうか。
現場主義を貫く三郎助、そして理論家の勝。その後の運命は実に対照的だが、作者の大島はそれを物語の中に大胆に展開した。三郎助が手がけた国産第1号の軍艦「鳳凰丸」と、その直後に薩摩藩が造り、幕府に献上された「昌平丸」にそれぞれ艦長として乗り込み、長崎までレースをしようという勝の提案を受け入れる。こうして2人の性格と友情が描かれていくという演出だ。
ところが実際には、長崎に向かったのは鳳凰丸ではなく、昌平丸だけだった。
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